研究課題/領域番号 |
15K04987
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
方 青 山形大学, 理学部, 教授 (10243544)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 移流拡散方程式 / 初期値境界値問題 / 局所非線形吸収型境界条件 / 爆発解 / 有限差分スキーム |
研究実績の概要 |
物理学、化学、生物学等の自然現象の数理モデルの中で多くのものが偏微分方程式で記述されている。生物学、生態学等のシステムにおいて、細胞、個体群等は外部の刺激を受けるとき相応する反応をする特性をもつ。このような特性は走性と呼ばれる。走化性、走光性、走気性等は走性のよく現れる形となっている。細胞を球対称の形から好適な軸を持つ状態にさせるプロセスが細胞両極性と呼ばれる。走化性現象においてある化学物質の勾配が細胞の移動方向を決めると同様に、細胞両極性は、ある外部の非対称合図によって制御される。細胞両極性に関する研究は近年活発に行われ、多くの反応拡散方程式で記述する数理モデルが提出されたが、ダイナミックスは完全にはまだわかっていない。そのために、数値的に解くことは、ダイナミックスの解明や現象の理解および予測に対して重要な手段と言える。今年度は自発細胞両極性の現象を記述する移流拡散方程式の2次元空間上の領域における数理モデルを考察した。爆発解の存在域を調べる数値スキームを構成した。この数値スキームを適用することにより、爆発解が存在するかどうかの数値シミュレーションを実現した。自然科学の研究分野に現れた爆発解に関する問題に対して、工学の現場では、具体的な計算結果が求められている。したがって、有効で高精度の数値解法と対応する数値解析の評価が求められる。ここで得られた成果は工学の現場に応用されることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、半無限区間上の移流拡散方程式の初期値境界値問題を空間2次元上の領域における初期値境界値問題へ拡大し考察した。2次元Keller-Segel型モデルとして1次元区間上の問題よりも解析が難しいので、その爆発解等の数値シミュレーションを実現するには高精度の数値スキームを構成する必要がある。1次元有限空間上の境界値問題を導入することに成功したので、それを2次元領域へ拡大し、非線形常微分方程式のシステムを得ることができた。この非線形常微分方程式のシステムを数値的に解くことにより、爆発解の数値シミュレーションを実現し、数理モデルに対して数値実験が行われた。爆発解の存在域をある程度調べることに成功した。これら成果をまとめて学術誌に投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1次元と2次元のKeller-Segel 型システムについて数値的なスキームを提出したので、最後の年度には、その数値解析を行い、またほかの反応拡散方程式で記述した数理モデルへ適用する。誤差評価を従来の収束解析方法で得られるかという問題も着手する考えとなる。本研究ではモデル問題に対応する空間非一様な分割を行い、その上でコンパクト有限差分スキームを構成することにより、空間変数に対して3次または4次以上の精度の近似解を得られるように期待できる。
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