29年度も、引き続きこれまで開発した精度保証に依るLyapunov関数構成法の応用を展開した。これには、写像度の精度保証法の整理と開発、非双曲型平衡点近傍での疑似Lyapunov関数構築の試み、ホモクリニック軌道およびヘテロクリニック軌道の検証のための精度保証法の構築と発展(特に4次元以上の高次元問題への一般化)、アフィン演算の2次形式への拡張およびこれに関するライブラリ構築など、多岐にわたるテーマが含ま れる。 このうち、Lyapunov関数と特に密接に関係するものは、非双曲型平衡点近傍での疑似Lyapunov関数の研究である。非双曲型平衡点近傍では、従来の我々の方法ではLyapunov関数が構築できないことがわかっていた。また非双曲型平衡点の存在は力学系の解挙動の分岐とも関わり非常に不安定な状況を扱うため、解析が難しい問題として知られている。このような状況のもとで、まずは部分的な突破口を求めて問題を限定し、Lyapunov関数と似た性質をもつ関数を2次形式で構築する方法を開発した。 高次元ホモクリニック軌道の存在検証に関しても、Lyapunov関数およびそこから発展した技法が用いられている。特にLyapunov Tracingと呼ばれる変数変換法において、Lyapunov等位面間の写像が特異点である平衡点への対応を含めて連続であることを証明し、Brouwerの一致点定理が適用可能となったことが重要である。 成果発表については、日本応用 数理学会・日本数学会の主催もしくは共催する各種研究集会で行っている。特に上記の非双曲型平衡点近傍の解析については、30年3月の応用数理学会連合発表会で発表している。また、高次元ホモクリニック軌道の存在検証についても研究を進め、30年3月に香港で開催された国際研究集会で発表した。
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