研究課題/領域番号 |
15K04993
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
関口 良行 東京海洋大学, 学術研究院, 准教授 (50434890)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 最適化理論 / 実代数幾何 / 凸解析 / 半正定値計画 |
研究実績の概要 |
平成 28 年度はドイツのコンスタンツ大学に滞在し研究を行った。コンスタンツ大学は実代数幾何とその最適化理論への応用研究のドイツにおける研究拠点である。コンスタンツ大学では定期的に開かれるセミナーと研究集会などを通じて、ドイツにおける研究グループと交流し、最新の話題について情報交換を行った。 半正定値計画問題は、多項式最適化問題や組合せ最適化問題の近似解法などで用いられる重要な問題であり、近年では代数幾何の応用研究対象として注目されている。本研究では、特異な半正定値計画問題の摂動解析を行った。特異な半正定値計画問題は、行列補完問題などで頻繁に現れる問題であるが、摂動に対して最適値が不連続に変化する。そのため、内点法を用いても解くことが難しい問題であり、その構造の理論的な解明が必要であると考える。摂動解析の研究はほとんどの場合、正則な問題に対して行われており特異な問題に対しての研究は少ない。本研究では、与えられた特異な半正定計画問題の最適値の連続変化が、問題に現れるどの行列のどの成分の摂動で起こるのかを判定する方法を発見した。さらにその判定法を応用し、制御問題より得られる特異な半正定値計画問題の構造を解析した。結果を論文 "Perturbation Analysis of Singular Semidefinite Program and Its Application to a Control Problem" にまとめ arXiv で公開し (arXiv:1607.05568)、現在投稿中である。この研究は九州大学の脇隼人准教授との共同研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今までほとんど行われていなかった特異な半正定値計画問題の摂動解析を行い、安定な摂動方向に対する行列を用いた具体的な判定法を発見したことは、最適化理論の研究において意義深いと考える。また、代数幾何と関係の深い多項式最適化問題、行列補完問題においても簡単に特異な半正定問題を作ることができることから、本結果を代数幾何の文脈で捉え直し、研究を発展させることができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成 29 年度は特異な半正定計画問題の摂動解析を、代数幾何の文脈で捉え直すことで発展させる。その際、多面体論、マトロイド理論などの離散数学の概念が関係していると予想されるので、離散数学の研究者と情報交換や共同研究を積極的に行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツにおける研究環境の整備に必要な金額が、予定していた額を大幅に下回った。 また、Combinatorial Algebraic Geometry, Fields Institute, Canada への参加を取りやめた。
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次年度使用額の使用計画 |
カナダで開催される SIAM Conference on Optimization とアメリカで開催される SIAM Conference on Applied Algebraic Geometry へ参加するために使用する。
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