研究課題/領域番号 |
15K04994
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山田 修司 新潟大学, 自然科学系, 教授 (80331544)
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研究分担者 |
田中 環 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10207110)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大域的最適化 / KKT条件 / FJ条件 / 逆凸制約 / 2次計画問題 / 分枝限定法 |
研究実績の概要 |
本研究は,逆凸制約を持つ高次な2次計画問題に対して,精度の高い近似解を求めることができる大域的最適化アルゴリズムの開発を目的としている。従来,逆凸制約を持つ数理計画問題に対しては,凸多面体近似法や強力な局所的最小解探索法であるDCAを導入した反復解法が提案されている。しかしながら,これらの手法は,反復回数に依存してアルゴリズムの実行に必要なデータ量が増加する,または求めた近似解に対してその目的関数値と大域的最小値の差を評価できないという問題点を抱えているため,変数の数が大きい場合には求めた近似解の精度を保証できないことが知られている。このため,当初の計画では, KKT点列挙法を導入することでこれらの問題点を克服し, 変数の数が200以上の問題に対しても大域的最小値と許容誤差内の目的関数値を持つ実行可能解を求める反復解法の開発を目指した。しかしながら,研究を進めていくうちに,KKT条件に基づく列挙法ではすべての局所的最適解の近似解を列挙することができないだけではなく,制約集合のすべての極大連結部分集合上に実行可能解を求めることもできない場合が生じることが判明した。そこで,この問題点への対策として,KKT条件と同様に知られている数理計画問題に対する最適性条件の一つであるFJ(Fritz-John)条件に着目し,FJ点を列挙する手法を提案した。数理計画問題の任意の局所的最適解がFJ点であることは証明されているので,FJ点列挙法を大域的最適化の分野で代表的な手法の一つである分枝限定法に導入することで,すべての局所的最適解の近似解を求めるアルゴリズムの構築に成功した。また,制約集合を形成する凸制約条件与える関数のレベル集合を逆凸制約与える関数のレベル集合を考察することで,2つのレベル集合の位置関係とFJ点の位置の関連性を解析することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、逆凸制約をもつ2次計画問題に対して,KKT条件を利用した局所的最適解の近似解を列挙する手法を利用した大域的最適化アルゴリズムの開発を目指した。しかしながら,研究を進めていくうちに,KKT条件に基づく手法では近似解を求めることができない局所的最適解をもつ数理計画問題の存在性が明らかになった。そこで,利用する最適条件をKKT条件からFJ条件に変更し,局所的最適解を近似するFJ点を列挙する手法の構築に成功した。また,FJ条件のパラメータを変数としたときのFJ点の軌跡を解析することで,KKT条件に基づくアルゴリズムよりも精度の高い局所的最適解の近似解が求まることを計算機実験で確認した。さらにFJ点の解析により,アルゴリズムの効率化を実現することができ,計算速度の高速化も達成することができた。その上,このアルゴリズムの理論を基に,大域的最適化問題の中でも応用例が多い問題の一つである有効解集合を制約集合にもつ線形関数最小化問題のアルゴリズムを構築にも成功し,その成果を国際会議で発表している。しかしながら,アルゴリズム内で行う固有値近似計算の精度向上を実現させることはできなかった。したがって,研究方針の大きな修正があり,固有値近似計算の精度向上は実現できなかったが,利用する最適性条件の変更により,近似精度を向上させ、当初の目的通りの計算速度をもつアルゴリズムの開発に成功しているため,この研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,まず昨年度達成することができなかったアルゴリズム内で行う固有値近似計算の精度向上を目指す。この目的を達成するために,凸制約を与えている複数の凸2次関数のMax形関数を近似する凸2次関数の生成方法を見直しを行う。また,保管する近似関数のヘッセ行列の近似固有ベクトルの本数の妥当性を再検証する。これらの見直しと再検証を行い,アルゴリズムの更なる近似精度の向上と計算速度の高速化を図る。また,これまでに構築したアルゴリズムの理論を基に,昨年度とは異なる応用課題である分数計画問題に対して,従来の手法よりも高速なアルゴリズムの構築を試みる。
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