研究課題/領域番号 |
15K04996
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中村 健一 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (40293120)
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研究分担者 |
矢崎 成俊 明治大学, 理工学部, 教授 (00323874)
中村 俊子 (荻原俊子) 城西大学, 理学部, 准教授 (70316678)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 界面ダイナミクス / 進行波 / 移動境界問題 / 順序保存力学系 |
研究実績の概要 |
結晶表面で観察されるわずか数原子層の高さしかない段差(ステップ)の時間発展ダイナミクス,特に階段状にステップが並んだ微斜面と呼ばれる構造やらせん転位と呼ばれる結晶表面に見られるスパイラル状の時空間パターンの形成メカニズムの解明を目指し,研究分担者と協力して,数理解析・数値解析の両側面から以下のような研究を行った。 (1)結晶表面のステップの時間発展ダイナミクスに関連する多安定型非線形項を持つ反応拡散方程式のフロント相互作用について考察し,階段状のステップ(複数段のフロント)の形成,フロントの消滅, 準安定なパターンの形成,およびフロント間の相互作用による非常にゆっくりとした運動が異なるタイムスケールで次々に生じることを明らかにした。 (2)時間に依存した係数を持つランチェスタ型モデルとよばれる2種競争型常微分方程式系の数理解析を順序保存力学系の観点から行い,解の定性的性質を調べるとともに,解の時間無限大での漸近挙動を完全に決定し初期値との関係(連続性依存性)を明らかにした。 (3)結晶の転位現象における転位線の厳密解を構成するとともに,その数値計算法の開発を行い,曲線を離散化する際の分点の配置方法(曲率依存型配置,一様配置など)に曲線の接線方向速度を利用することの有効性を明らかにした。また,この知見を他の問題に適用して,曲率流方程式を用いた画像輪郭抽出法の開発やある化学反応に見られるスパイラルパターンの数値的実現等の成果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
結晶表面のステップダイナミクスの数理解析に関しては,初期状態からのステップパターンの形成,相互作用によるステップの衝突による消滅,ほぼ平衡状態に近い準安定状態の形成,さらに階段状ステップの相互作用による非常に遅い運動についてかなり詳細にとらえることができた。 結晶の転位現象の数値解析においても,転位線の運動を曲線の発展方程式ととらえて,曲線の接線方向速度を利用した分点の配置による離散化により,数値的に安定な計算スキームの導出を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
結晶表面のステップダイナミクスの数理解析に関しては,多安定型反応拡散方程式モデルの解の漸近挙動に関する知見を比較定理を利用して得ることを次の目標とする。また、実際の現象より正確に記述するモデルとして,固化した結晶の原子と表面を拡散する原子とを異なる変数として取り扱うことのできる反応拡散系による定性的モデルの導出を目指す。 数値解析に関しては,ステップの不安定化により隣接するステップが融合してしまう現象を理解するために,曲線のトポロジーが変化する場合にも追跡可能な安定かつ高精度の数値計算スキームの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
数値計算ワークステーションを研究代表者が採択された別の科学研究費との共同購入により購入したので,当初の予定よりも支出額を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は研究代表者のスケジュール調整がうまくいかず,研究グループの打ち合わせを行うことが困難だったため,次年度は当初計画以上に打ち合わせを行うことを検討しており,共同購入による余剰金額をそのための経費として計上する。
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