研究課題/領域番号 |
15K04997
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
小原 敦美 福井大学, 学術研究院工学系部門, 教授 (90221168)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 情報幾何学 / 共形平坦化 / 一般化指数分布族 / 二重自己平行 |
研究実績の概要 |
情報幾何学では,リーマン計量について互いに双対的なアファイン接続のペアという概念が様々な重要な働きを見せる.従ってこれらのアファイン接続に関して自己平行な部分多様体も様々なところに現れるが,このような概念については,まだほとんど研究されていない. 昨年度,対称錐と呼ばれる数学的対象についてその部分多様体が二重自己平行となる必要十分条件を求めたが,今年度は確率単体(離散確率分布の集合)を扱った.確率分布集合に対する二重自己平行性は,統計科学・情報科学・データサイエンスなど多くの応用が予想されるからである.まず,確率単体の標準的な情報幾何構造から定まる二重自己平行な部分多様体を代数的に特徴付けて必要十分条件を求めた.結果として,その代数の部分代数が二重自己平行な部分多様体に対応することが明らかになったが,この事実を利用して,さらにそのような部分代数の分類を与えた.これにより,与えられた部分多様体が二重自己平行かどうかを判定できるようになっただけでなく,逆に望ましい二重自己平行多様体を構成する為の重要な指針が与えられたことになる(IGAIAワークショップ報告集に投稿中). またアファイン微分幾何と呼ばれる手法にもとづき,確率単体上の様々な情報幾何構造(アファイン埋め込みに依存する)を共形平坦化して得られる双対平坦構造を明らかにした.この結果は,リプリケータ方程式と呼ばれる確率単体上の勾配流や情報幾何構造から定まる測地流と関係があるので,それらに対して成立するいくつかの結果を導き,応用の可能性を示した(パリGSI2017で発表,Entropy誌2018年3月号で出版).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
情報幾何構造の共形平坦化は本研究の主目的の一つであったが,確率単体に関してはほぼ満足のいく結果が得られた.またこれを用いて,もう一つの目的である数理・現象・計算技術への応用として,幾何的ダイバージェンスと呼ばれる乖離度に関するボロノイ線図の構築アルゴリズムを導け,二つの目標に対し徐々に進展している. また二重自己平行性に関しては,特殊ではあるが確率分布モデルである確率単体に関する結果が得られたことで,様々な応用へ足場となることが期待できる. よって,本計画の三年目としてはおおむね順調に進んでいると考える.
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今後の研究の推進方策 |
「共形平坦化」,「二重自己平行性」の概念をさらに広い多様体,特に多くの応用が見込まれる確率モデルに関して拡張していくことがまず挙げられる.さらに,現在完成している確率単体上での各種(数理・現象・計算技術)への応用に関する研究を行っていく予定である.前者に関しては,連続変数の確率分布族や中心アファイン統計多様体と呼ばれるものへの研究に取り組んでいる.後者に関しては,確率単体上の二重自己平行性と線形計画法アルゴリズムへの応用研究を推進する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)当該年度は予定していた国際会議でプレナリー講演で招待となったので,旅費・滞在費が不要となり次年度使用額が生じた.
(使用計画)次年度使用額約30万円に対し,計算機及び付随する周辺機器の更新,新規ソフトウェアの購入に20万円程度,国内研究会や共同研究打ち合わせの旅費に10万円程度使用する予定である.
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