研究課題
情報幾何学では,リーマン計量について互いに双対的なアファイン接続のペアが様々な重要な働きを見せる.従ってこの二つの双対なアファイン接続に関して自己平行な部分多様体も様々なところに現れるが,ほとんど研究されていない.本研究の初期に対称錐と呼ばれる数学的対象についてその部分多様体が二重自己平行となる必要十分条件を求め,二重自己平行な部分多様体の代数的な特徴付けによる必要十分条件と分類を与えた.今年度は,統計科学のみならず,最適化・数値計算・システム制御・信号処理などの幅広い分野に広く現れる正定値対称行列の二重自己平行部分多様体の実応用について検討し,いくつかの具体例を示した(参考文献:Doubly autoparallel structure on positive definite matrices and its applications).一方,拡散現象は確率分布の時間発展と捉えることができる.過去の研究で,複雑系に特有な異常拡散という現象を示す多孔媒質拡散方程式の解の振る舞いとq-ガウス分布との詳細な関係を情報幾何によって明らかにした.近年,インタネット上の情報拡散,生態ネットワーク,疫病の拡散,機械学習のアルゴリズムなど空間離散的な拡散現象に興味がもたれている.グラフ上のラプラシアンを用いたべき型非線形性を有する拡散方程式が,興味深い同期現象を引き起こすことを数値実験により発見し,そのメカニズムとq-指数関数が重要な働きをすることを明らかにした(参考文献:Behaviors of solutions to network diffusion equation with power-nonlinearity - A role of the q-exponential function for sufficiently large power-exponent -).このようなネットワーク上の非線形拡散現象の振る舞いに関する知見は,上述したような応用における人工ネットワークの設計に知見を与えるものと期待できる.
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Eur. Phys. J. Special Topics
巻: 229 ページ: 729-741
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Frank Nielsen and Frederic Barbaresco eds. Springer Lecture Notes in Computer Science, (proc. of GSI 2019), Springer LNCS
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