研究実績の概要 |
研究の目的は量子論における同時操作不可能性の背後に存在する数学的構造を明らかにすること、また同時操作不可能性から帰結される種々の原理的限界を調べることであった。これに関連し2018年度は計1本の論文と1本のプレプリントの出版を行った。 Journal of Mathematical Physics誌上で発表されたThe unavoidable information flow to environment in quantum measurements(量子測定における環境への不可避的な情報の流出)では以下の研究を行った。研究代表者はQualitative noise-disturbance relation for quantum measurements, T Heinosaari, T Miyadera, Physical Review A 88 (4), 042117 (2013)において、事後操作に基づいた順序を物理量空間とチャネル空間に導入し、それを用いることで情報攪乱定理の定量化によらない表現を見出している。そこで、最も大きな役割を果たしたのが、与えられた物理量と両立可能なチャネルの集合が一つの元から生成される主イデアルとしての構造を持つという事実であった。今回、この生成元のチャネルの構造を共著者のE.Haapasalo, T.Heinosaariとともに数学的に詳細に調べた。その結果、出力空間の次元の最小値は与えられた物理量(とある条件を満たす場合)における各成分の階数の和によって決まることが示された。これは、物理量がシャープでないときには、環境への情報の流れが不可避であることを示している。
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