研究課題/領域番号 |
15K05001
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
中田 寿夫 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (10304693)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 大数の弱法則 / 無限大の期待値 / 正則変動 |
研究実績の概要 |
期待値が発散する確率的ゲームとして、倍賭けのゲームであるペテルスブルグのゲームが広く知られている。平成27年度においては、ペテルスブルグのゲームを含む自然な分布族を定めてその性質を調べた。具体的には裾確率が-1のオーダで減衰するような確率分布で、その係数の部分の下極限が正で上極限が有限であるものである。式で書くと単純に書き下すことができるが、裾確率の関数が正則変動(regularly varying)でないものも含まれる。従って、タウバー型定理を単純に適用することができず、扱い易いものとは言えない。そればかりか、劣指数的(subexponential) ですらないものも含まれるので、良く知られている数学的な道具がなかなか適用できない。平成27年度はその分布のクラスにおいて、特に大数の弱法則に関する研究を進めた。この分布族からの独立な確率変数で、ある種の一様性を仮定したものを扱った。これは同分布性を必ずしもみたさない。その状況の下で、重みのある大数の弱法則を得るための十分条件を与えた。少々強い条件ではあるが、単純でチェックしやすい形である。それを用いて、A. Adler (2012)の独立なPareto分布に関する大数の弱法則の結果を自然に拡張することができた。この拡張はAdler自身も望んでいたものであり、条件を整備したことにより、細部が単純化されて見通しがよくなったために得られたものである。さらには、独立同分布の場合の結果も言及して、定理の適用例をいくつか与えた。
なお、この研究は雑誌論文として Stat. Prob. Lett. で2016年に発表され、口頭でも統計数理研究所の研究集会「無限分解可能過程に関連する諸問題」や筑波大学で開催された日本数学会2016年度年会でも発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大数の弱法則に関する結果を論文としてまとめることができたため。また、連携研究者の志村助教と共同研究を始めることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、大数の弱法則に関する研究から派生した問題に関して考えてみたい。具体的には、連携研究者の志村助教の提案した切断した期待値が対数関数と漸近的に等しい確率分布の族に関しての性質を調べることである。その分布族は単純な形をしているものの、多様なふるまいをすることがわかっており、部分的な結果は平成27年度の共同研究集会「無限分解可能過程に関連する諸問題」で志村助教によって発表された。裾確率の関数として正則変動、劣指数的、O-劣指数的のクラスに入るための条件を明らかにすることをさしあたりの目標と考えている。畳み込みの計算が単純な形ではないので自明でない条件を得るのは困難であるようにも思われるが、分布の裾の畳み込みに関する研究を長年行っている志村助教に期待している。
また、この問題で手詰まりにならないようにするために、関連した問題も考えていきたい。例えば、独立同分布の和の分布を調べる際に、最大値の分布がどのように寄与しているかなどを調べていきたいと思っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究で使用しているデスクトップパソコンは、記憶容量不足が主な要因で新規のものを購入予定であった。しかしながら、業者と相談した結果、SSDの入れ替えで済んで、物品費を予定よりかなり安くあげることができた。そこで浮いた物品費を平成27年度の他に回すことも考えたが、科研の基金の制度を利用して平成28年度の外国旅費として充当させることとした。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の理由の通り、平成28年度の外国旅費として研究代表者はカナダで行われる研究集会に参加予定である。連携研究者の志村隆彰助教も外国旅費として予算を計上している。
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