研究課題/領域番号 |
15K05001
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
中田 寿夫 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (10304693)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ペテルスブルグのゲーム / 重み付きの大数の法則 / Pareto 分布 / 極値分布 |
研究実績の概要 |
平成29年度においては、期待値が発散するゲームについて独立であるが必ずしも同分布ではない場合について以下の二つの研究を行った。一つ目は一般化ペテルスブルグのゲームであらわれる確率変数の最大値の分布の漸近挙動の調査である。もう一つは、Pareto 分布に従う確率変数の和に関する重み付きの大数の法則の研究である。 まず、一つ目のものを述べる。一般化ペテルスブルグのゲームであらわれる分布は、期待値が発散するだけでなく裾確率関数が正則変動しないため、分布収束に関する一般論を用いた解析ができない。そこで、本研究ではAnderson et al. (1997)による、Poisson分布のパラメータを調節させながらGumbel分布に収束させる手法を適用させることを試みた。その結果、Frechet 分布に分布収束させることに成功し、さらにはBerkes et al. (1999) のマージ収束の収束の速さに対応する評価をえた。 次に、二つ目のものを述べる。これは独立なPareto 分布に従う確率変数の和についてのA. Adler (2017) の結果に関する補足的な研究である。自然な方法を採用すると大数の弱法則は成立するものの、多くの場合は確率1で上極限が無限大に発散してしまい、弱法則を強法則に強めることができないというのが彼の主な主張であった。その事実が正しいこを追認する単純な条件で記述された命題を与えつつも、Pareto 分布のパラメータに応じてスケーリングのパラメータのとり方を吟味すれば、弱法則だけでなく強法則に強める場合も存在することを指摘した。 なお、一つ目の研究はデルフト工科大学での国際会議EVA2017で発表された。また、同会議では連携研究者である統計数理研究所の志村隆彰准教授との平成28年度中に行われた共同研究も発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
畳み込みの分布に関する研究が滞っているものの、Pareto 分布に関する研究が速やかに論文となり出版されたため。
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今後の研究の推進方策 |
期待値が発散している分布の漸近挙動を考える際に、畳み込みの分布の性質についての研究が依然として残ったままである。そのため、このことについて考えていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は連携研究者である統計数理研究所の志村隆彰准教授の分を含む2名分のデルフトへの旅費を工面することになったため、平成28年度分の予算はかなり節約して執行された。平成29年度はほぼ予定どおりの予算を使用したが、その一部がある程度残っていたため、無理に使用することなく平成30年度の予算に回した。
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