研究実績の概要 |
平成30年度は期待値が発散する非負の確率変数についての重み付きの大数の弱法則の成立の条件について調べた。本研究のうちの過年度にえられた結果 Nakata (2016, Stat. Prob. Lett.) はAdler (2017, Open Math.)を含む何人かの著者によって拡張されているが、彼らによって発表されている最新の結果を吟味して Nakata (2016)の主張や拡張について再検討した。例えば、Ma et al., (2018, J. Ineq. Appl.) は独立性が不成立のとき、具体的には、ペア毎に負の依存(NQD)という条件に弱めても Nakata (2016)と同じ結論をえることができるという主張を行っている。独立性は自然で議論を明確にすることは確かであるが、条件としては強すぎることを確認した。独立性と比べて負の依存性で不等式で評価するのは、議論がさほど変わらずスムーズに証明ができる。平成30年度は、期待値が発散してなおかつ強い混合性を考えたときも、同じことが言えるかということを考えた。切断された確率変数の和の分散の評価が鍵となるが、混合性の本質をとらえたすっきりした条件を導出することができておらず、未だに定理の形に纏めることができていない。このように、平成30年度中に問題が解決されずに次の課題に持ち越しているため平成30年度の成果としてはあまり進展が見られなかったと言わざるをえない。
一方で、前年度の研究成果として整理した内容は、統計数理研究所で開催された共同研究集会「無限分解可能過程に関連する諸問題」とリトアニアのビリニュスで開催された第12回確率・統計国際ビリニュス会議において発表された。
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