研究成果の概要 |
粒子法を移流が卓越した流れ問題に適用した場合, 時間の経過に伴い移流速度に応じて移動する粒子が, 対象となる空間内で偏在し, 計算手法の不安定化や計算精度の悪化を引き起こす. 本研究課題は, 粒子の偏在に伴う困難を解消するために, 物質微分の近似に特性曲線法を適用した粒子法の提案と, その数値解析を行った. 流れ問題に対する粒子法の時間積分各ステップに, 特性曲線法を半陰的に導入した. これにより, 各時刻ステップにおいて, 粒子法で用いる補間作用素や近似微分作用素の打ち切り誤差評価に対する十分条件を満たすように粒子を再配置することが可能となり, 提案した数値計算手法の誤差評価を得た.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
粒子法はその特徴から, 対象となる流体領域が時間経過に伴い変化する移動境界問題の取扱いが容易なため, 近年, 産業における製品設計や, 防災シミュレーションなどの場面で盛んに用いられている数値計算手法の一つである. しかしながら, 有限差分法や有限要素法などの数値計算手法と比較すると, その数学的観点からの基盤理論の整備がなされているとは言い難い. そこで本研究課題の成果により, 粒子法を用いた数値計算結果に対する信頼性や計算手法の効率性を高めることができれば, 粒子法を適用する例えば津波遡上数値計算を基にしたより良い避難経路策定に繋がる可能性がある, などの社会的意義が将来的に期待できる.
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