ジャンプ型の確率微分方程式による資産モデルを用いた保険数理における破産確率、及びその一般化であるGerber-Shiu関数をによるリスク尺度の構築、特に、経時的に変化するリスクを評価する動的リスク尺度の構築と、その数学的正当化を行った。従来のリスク尺度は、確率変数の空間上の写像として定義されるのが一般的であったが、ここでは動的リスクを確率過程で測るために、確率過程が値をとる関数空間上の写像として定義する事で、本課題で提案したリスク尺度の数学的正当化を行った。 次に、これらのリスク尺度に死亡リスク評価を含める目的で、死亡率予測モデルの予測精度改善に関する研究を行った。信頼性理論に基づいた小地域の死亡率推定に関する新しい方法論を提案したが、予測精度の向上については課題を残した。 加えて、Gerber-Shiu関数に対する統計推測理論の研究も行った。これは上記で構築したリスク尺度の実務的応用のために必須のものである。破産確率の推定ではパラメトリックな漸近理論の下で,初期資産が大きい場合の破産確率の近似的な信頼区間を提案した.また,Gerber-Shiu関数に対してはノンパラメトリックな推測論を考察し,そのL2の意味での一致推定量と収束率を明らかにした.さらに,攪乱項に小さなセミマルチンゲールを持つような確率微分方程式に対するパラメータ推定を考察し,推定量の一致性と漸近分布を明らかにし,さらにシミュレーションでみられる漸近正規的な現象に対して,理論的解釈を与えた.
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