研究課題
昨年度までの研究により、連星系でのシミュレーションではコリオリの力の取り扱いにより角運動量が不自然な値となりうることが明らかになっていた。本年度はコリオリの力の評価により、シミュレーション結果にどのような影響が現れるかを調査した。初期に重力と遠心力が釣り合った周連星円盤をおいたモデルでは、コリオリの力を運動量密度に比例させた場合や、数値流束に比例させた場合、連星が10回転ほどした時点で流れが大きく不安定になる。これに対して、コリオリの力が運動量密度と数値流束の平均に比例させると、ガスが連星へ安定に降着する。ガスが遠方から動的に降着させた場合でも、シミュレーション結果はコリオリの力の評価法に強く依存する。これまでのシミュレーションに見られた、不安定なガス降着は、コリオリの力の評価法が不適切であったためである可能性が高い。これらの結果は国際研究集会で発表し、その結果は査読のある集録に掲載された。本研究の結果は自己重力系のシミュレーションにも応用できる。重力エネルギーの解放による運動エネルギーや熱エネルギーの増加は、ガスの速度と重力加速度の内積に比例するが、これも数値流束を使って評価すると、重力も含めた全エネルギーの保存を記述する方程式を解いたのと等価になる。シミュレーションに使用する数値格子が一様な場合はこのことを証明すると共に実証した。また解適合格子の場合にも、Poisson方程式を適切に差分化すれば、自己重力を含む全エネルギーを厳密に保存することを保証する計算手法を開発した。これについては発表準備中である。本課題では数値粘性を加え、衝撃波を精密に捉えることを目標としていたが、十分な成果を挙げることが出来なかった。数値粘性を大きく加えたが、期待する効果が得られなかった。数値シミュレーションと並行して、原始惑星系円盤の観測研究に共同研究者として加わり論文を発表した。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件)
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