研究課題
すばる望遠鏡による高速電波バーストの探査は継続して行われている。2015年12月30日に発生した高速電波バーストの追観測で、すばる望遠鏡Hyper Sprime Cam を用いて深い撮像を3度行った。これは高速電波バーストの光学残光に強い制限を与えるデータである。現在、海外の研究グループと共同で論文を取りまとめている。その後、日本チーム主導でより詳細な論文を出版する予定である。また、2015年4月20の高速電波バーストについては、我々が発見した母銀河は活動銀河中心核ではないかという反論が出ており、これについて新たな知見を得るため、電波追観測などを行った。我々のすばる望遠鏡の可視光画像もこの解析に役に立った。これを電波観測をしたオーストラリアの研究グループと共に論文として発表した。高速電波バーストのもう一つの研究として、高エネルギーガンマ線が同時に放出されている可能性を検討するため、フェルミガンマ線天文台衛星の5年以上にわたるデータの中で、ミリ秒スケールのガンマ線のフラッシュがないかどうか、解析を行った。結果的に、統計的に有意なバーストは見つからなかったが、これを用いて高速電波バーストのガンマ線・電波比について、これまでで最も厳しい上限値をつけた。この上限値はパルサーのガンマ線・電波比とほぼ同程度であり、高速電波バーストの起源に新たな示唆を与えるものである。ガンマ線バーストについては、今年度は高赤方偏移探査に有用なバーストイベントがなかったため、研究は大きな進展はなかったが、引き続き、すばる望遠鏡によるGRB追観測チームの一員として理論解析に貢献していく予定である。
2: おおむね順調に進展している
観測的には、2016年度は有力な高速電波バーストやガンマ線バーストのイベントは起きなかった。もともと、イベントレートはそう高くないので、これは予想外のことではない。一方で、2015年度に取得したデータの解析を進め、また、フェルミ衛星のガンマ線データを用いて高速電波バーストのガンマ線放射に制限をつけるなど、理論・データ解析面での研究を進めたことは予定通りである。
引き続き、すばる望遠鏡による高速電波バーストの追観測を続ける。初年度に出した成果を他の高速電波バーストでも確認し、成果を完全に確定することが重要な目的である。さらに、理論研究として、連星中性子星合体のシミュレーションデータを用いて、連星中性子星合体からの高速電波バーストのモデルづくりを推進しており、これを完成させて成果を公表することを目指す。また、連星中性子星合体からの電波残光の理論モデルも研究を行っており、高速電波バーストのみならず、重力波天体の追観測にも有用な研究成果としてまとめる。ガンマ線バーストについても、高赤方偏移の条件の良いガンマ線バーストが発生したら、迅 速に解析を行い、成果を発表していく予定である。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 464 ページ: 1563-1568
10.1093/mnras/stw2401
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society: Letters,
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