高速電波バーストについては、連星中性子星合体から高速電波バーストが発生しうるかどうかを理論的に検討した。特に、合体時に物質がまき散らされることで電波が吸収されてしまうのではという問題を調べるために、一般相対論的連星合体シミュレーションのデータを用いて、合体後の大質量中性子星が高速で回転を始める時刻と、物質がまき散らされ始める時刻の比較を行った。その結果、高速回転が始まってから数ミリ秒ほど経過してから物質が飛ばされることがわかり、この時間窓の中で高速電波バーストが生じうることを示した。一方、物質がまき散らされた後は電波が出てこられないため、数ミリ秒で終わって繰り返しがないという高速電波バーストの性質をうまく説明することもできる。一方、繰り返すFRB121102の発見を受けて、こうしたリピーターバーストの起源について理論的研究を行った。連星中性子星合体の後で、総質量が比較的軽い場合は、合体後の中性子星が長く生き残る可能性が考えられている。そうした中性子星は、まき散らされた物質が拡散で消え去った10年程度の後に、極めて若く高速回転する得意な中性子星となる。そのシナリオで様々な観測量を見積もり、FRB 121102 と矛盾が無いことを示した。観測研究では、すばる望遠鏡で追観測を行った FRB 151230 について、視野内にあった可視変動天体を詳細に吟味し、FBRとの関連が疑われる天体があるかどうかを調べた。その結果、Rapid Transient と呼ばれる天体がFRBと関連しているかもしれないという示唆を得た。まだ今後の検証が必要であるが、興味深い結果である。
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