若い恒星状天体(前主系列星)の赤外線輝線の直線偏光スペクトルの測定に向けて、波長較正用の比較用輝線光源とその自動導入用リニアステージ、消偏光補正用ワイヤーグリッドそれぞれについて、かなた望遠鏡可視赤外線同時カメラHONIRへの導入を進めた。 光源としては、可視光から近赤外線までの広い波長域で十分な数の輝線を得るため、Hg/ArランプとXeランプを選定した。また、リニアステージについては、装置上部の光入射光路に光源を挿入するために十分な稼働幅をもつものを選定した。加えて、消偏光効果の較正に必要なデータを取得するために、可視光から近赤外線にわたって消光比5000:1を有する超広帯域ワイヤーグリッド偏光フィルターを選定した。 当初予定では、高分散偏光分光用グリズムと焦点スリットマスクの製作・装置への装着も行うことを想定していた。しかし、観測装置HONIRの定常運用の都合上、今年度は装置運用を止めて素子導入を行う時間が十分確保できなかったため、これらは本研究後の課題として残した。 一方で、観測装置HONIRの運用において致命的となる、内部フィルターホイールの真空冷却モーターの故障が発生した。そのため、装置の真空冷却容器を開封してモーターの交換作業を行ない、装置の正常復旧を果たした。 前主系列星の近赤外線偏光分光観測の実施も計画したが、HONIR装置の光学系の素子配置が偏光分光観測において十分な性能が果たせない(検出器上でスリット像が十分にシャープな像を結ばない)状態で固定されており、それを修正する時間が確保できなかった。よって、過去に取得した同種天体の偏光分光観測データの解析に専念した。現在、研究成果の解析結果と論文とりまとめを進めている。本課題終了後となるが、2019年度中を目処とした査読論文投稿を目指している。
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