研究実績の概要 |
世界中の天文観測機関の協力により実現された ALMA をはじめ、各地の大型電波望遠鏡での観測により、分子雲の全域にわたる大きなスケールで CO 分子以外の多くの微量分子が分布していることが分かってきた。この詳細を知ることは、分子雲全体での化学組成の変遷を追う上で非常に重要であり、非常に広い観測領域にて、非常に広い観測周波数で、そして非常に高い感度で多種多様な輝線スペクトルを観測する必要がある。 そこで我々は、観測可能な周波数帯域幅を従来よりも大幅に拡張する広帯域受信機の開発を進めている。特に、天体からの信号を検出器まで伝送する導波管型の直交偏波分離器 OMT、方向結合性分配器 BLC などのデバイスは、従来比帯域 40% 程度が限界とされてきたが、これらについて 50 % を超える広帯域化を達成しなければならない。 昨年度までの成果により、OMT, BLC の両者について従来のモデルが帯域幅を制限していた原因を解消することで、比帯域 55% 程度が得られる新たなモデルを設計することができ、67-116 GHz ( ALMA Band 2+3 相当 ) OMT の試作等を達成できている。 本年度ではさらに発展させて ALMA band 7+8 に相当する 275-500 GHz, 58.5% に適用可能な OMT 開発を進めた。本帯域設定の場合にはさらなる広帯域モデルを開発する必要があったが、偏波分離機構の直後に高次モードカットフィルタを設ける等して高周波数側の帯域幅を伸ばし、比帯域 60% 程度を達成した。また、500 GHz という比較的高い周波数帯域に対して加工誤差による特性劣化の影響を小さくするため、金属切削加工面の研磨手法等を見直すことで、従来よりも高い加工精度が得られた。これらの新技術により、275-500 GHz OMT は実現可能な見込みとなった。
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