研究課題/領域番号 |
15K05029
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坪野 公夫 早稲田大学, 理工学術院, 研究員 (10125271)
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研究分担者 |
大師堂 経明 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (10112989)
青木 貴弘 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (30624845)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 電波望遠鏡 / FRB / ブラックホール / 重力波 / マイクロクェーサー / ジェット / 降着円盤 |
研究実績の概要 |
2015年6月、地球に最も近いブラックホールを含むと思われているX線連星V404 Cyg が26年ぶりにアウトバーストを起こした。早稲田大学那須電波干渉計では、このアウトバースト発生の前後を含めてV404 Cyg からの電波観測に成功した。観測された光度曲線により電波源の激しい変動が明らかになった。これらの観測結果は2度のAtelへの投稿および天文学会での講演によって発表された(論文執筆中)。 また、2015年7月にはSwift衛星が検出したshort GRB(GRB150728A)の残光と思われる電波トランジェントの観測に成功した。short GRB発生の75分後に那須電波干渉計で電波変動が検出され、2日後にはノイズレベルまで減衰した。これがGRBの残光なら、かつてない強度の残光を捉えたことになる。さらに、GRBより早precursorと呼ばれる先駆け信号を検出した可能性もある(論文執筆中)。 ブラックホール連星合体に伴う重力波をLIGOが検出したことにより、新しい天文学の幕が切って落とされた。LIGOにおける重力波イベント発生のアラートは現在まだ完全なリアルタイムではないが、今後は即時アラート体制が確立される見込みである。そのときには、γ線、X線を始め光学、電波のあらゆる電磁波領域で総動員の観測が実施されるであろう。そうなれば重力波-γ、X線-光学-電波の同時観測により重力波イベントの全体像に迫ることが可能になり、ブラックホールや中性子星の物理の解明が大きく前進すると予想される。那須電波干渉計はこのような変動電波検出に適した国内でほぼ唯一の観測装置である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでに低速データの取得系およびその解析プログラムが完成した。低速データとは8ch 空間FFT の複素出力からパワーを作り、それを0.63 s 積分したものである。これにより、データ量を抑えることができ、電波干渉計の常時モニターを可能にする。例えば落雷などで一部信号を喪失したような場合は、リアルタイムで故障個所を知ることができる。また、標準天体を利用した干渉計の感度の較正にも使われる。低速データでは3 時間ごとにサマリーが出力される。
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今後の研究の推進方策 |
できるだけ多くの観測データを蓄積する。目標は1か月で200 時間分の良質なデータを得て、データ解析を実施することである。実際のデータ解析は当初はオフラインで、最終的にはリアルタイム処理で行う。また、他チャネル(X、γ、ニュートリノ、重力波等)との連携に努め、変動電波バーストをめぐるウォーニング、フォローアップの体制を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度末に発注したアンテナ塗装工事の経費が科研費残高をわずかに超えたため、支払いを2016年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
上記支払いを2016年度初頭に速やかに逐行する予定である。
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