研究課題/領域番号 |
15K05030
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
今西 昌俊 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (00311176)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 超巨大ブラックホール / サブミリ波 / 赤外線銀河 / 分子ガス / 活動銀河中心核 / 星生成 / 合体銀河 / 化学組成 |
研究実績の概要 |
太陽の1000億倍以上もの光度を赤外線で放射している赤外線銀河は、強力なエネルギー源が塵の向こう側に隠されて存在する天体である。エネルギー源として は、星生成活動(活発に生成される星内部で生じる核融合反応によるエネルギー生成)、及び、活動銀河中心核(AGN)活動(太陽の100万倍以上の質量の超巨大ブラックホールへ物質が落ち込む際の重力エネルギーを放射に変換して明るく輝く活動)が考えられる。しかしながら、塵を豊富に持つ赤外線銀河では、サイズ的に小さなAGN(質量降着している超巨大ブラックホール)が塵の奥深くにすぐに埋もれてしまい、観測的にきちんと見つけ出すことが困難になるという大きな問題がある。本研究では、塵吸収の影響の小さなサブミリ波に基づく観測から、見つけるのが困難な埋もれたAGNのエネルギー的役割を正しく見積もる独自の手法を確立させ、赤外線銀河の塵に隠された側でのAGNと星生成活動の役割を正しく理解することを目標とする。
2018年度は、私自身が研究代表者のALMAの採択課題に基づき、以下の研究成果を出すことができた。 (1) AGNでシアン化水素(HCN)輝線が強く観測されることはわかっていたが、その起源についてははっきりと解明されていなかった。AGN放射の影響によってHCNの組成比が増加するという説と、赤外線銀河の中心核の高密度、高温分子ガスによってHCNが励起されやすい(AGN、星生成のどちらでも良い)という説があった。赤外線銀河の複数の回転遷移の高密度分子ガス輝線、及び、光学的厚さの心配のない同位体分子輝線の観測から、HCNの高い組成比が効いていると判断できる観測的証拠を得た。 (2) 赤外線銀河の空間分解した高密度分子ガス輝線の観測を行い、期待通り、大部分で、AGNの存在するであろう中心核でHCN輝線が強いことを観測的に明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は、主著の査読論文を1編出版したのに加え(Imanishi et al. 2018 ApJ 856 143)、さらに1編の主著論文が受理され(Imanishi et al. 2019 ApJS 241 19)、2019年4月に掲載される。ALMA Cycle 6に研究代表者として提出した提案も採択され、引き続き研究を発展させることができる。当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
高密度分子ガスの指標であるシアン化水素(HCN)、及び、ホルミルイオン(HCO+)の3個の回転遷移輝線で、赤外線銀河を空間分解して観測データを取得する。局所的熱平衡を仮定しないRADEXモデル計算を用いて、これらの観測データから、分子ガスの体積数密度、力学温度、光学的厚さに制限を加える。赤外線銀河中心核の高密度分子ガスの物理状態を明らかにし、そこでHCN回転遷移輝線が強い原因として、高いHCN組成比と高いHCN励起状態を定量的に切り分ける。また、近傍だけでなく、遠方の赤外線銀河にも我々の手法を拡張していきたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究はALMAによる合体赤外線銀河の観測データを基に進めるものである。ALMAは競争率4倍超の狭き門であるため、 提案の最大半分程度が採択されると仮定して研究を進めて来たが、当初の想定以上の8割程度が採択され、多くの観測 データが来た。そのため最終解析結果をまとめるのに当初の予定以上の時間がかかっている。観測データの物理解釈に必要なモデル計算、その成果発表は、2019年度にずれ込む見込みである。
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