研究実績の概要 |
国際共同利用装置である大型電波干渉計ALMA(アルマ望遠鏡)の初期運用(Cycle 0, 1, 2)で観測を行い、セイファート銀河NGC 1068のデータの解析をさらに進めた。この銀河は、中心部にブラックホールが存在し、circumnuclear disk (CND)が取り囲んでいる。さらにCNDは、爆発的星形成が起こっているリング状の分子雲(直径30秒角程度)(SB ring)に囲まれている。 Cycle 1では、主にCN分子を100 GHz帯で観測し、CNDに集中した分布を明らかにした。また、SB ringにおいても輝線が弱く確認された。Cycle 2では、データを大幅に追加した。これにより、Cycle 0, 1, 2のデータを合わせ、波長3 mm帯(85-113 GHz)でのほぼ全周波数領域をカバーするスペクトルおよび分布のデータが得られた(イメージング・ラインサーベイ観測)。
データ量が多く解析を続行中であるが、多数の輝線が検出され、かつそれらの分布が多数描き出された。分布は、CNDに集中しているもの(SO, CH3CN, HC3Nなど)、CNDとSB ringの両方に分布しているもの(CS, CH3OH, HNCOなど)、主にSB ringに分布しているもの(13CO, C18O)に分類できた。また、CNDには2つの分布のピーク(knots)が存在することが知られているが、それらを空間的に分解して調べることができた。
分布図から、CND, SB ring, および2つのknotsでの輝線強度(CSの強度で規格化)の相互比較を行った。予備的な結果ではあるが、CNDとSB ringでは明らかな違いがいくつかの分子で見られた一方、2つのknotsは似た状況であった。このように、星間化学、天体物理の観点から、研究を大きく進める興味深い結果が得られた。
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