研究課題/領域番号 |
15K05031
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
高野 秀路 日本大学, 工学部, 教授 (00222084)
|
研究分担者 |
中島 拓 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 助教 (90570359)
|
研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2019-03-31
|
キーワード | 電波 / ALMA / 銀河 / NGC 1068 / ブラックホール / 爆発的星形成 / 分子組成 |
研究実績の概要 |
国際共同利用装置である大型電波干渉計ALMA(アルマ望遠鏡)の初期運用(Cycle 0, 1, 2)で得たセイファート銀河NGC1068のデータ解析を続行した。この銀河は,中心部にブラックホールが存在し,circumnuclear disk (CND)が取り囲んでいる。さらにCNDは,爆発的星形成を起こしているリング状の分子雲(直径30秒角程度)(SB ring)に囲まれている。Cycle 0, 1, 2のデータを合わせ,波長3 mm帯(85-113 GHz)でのほぼ全周波数領域をカバーするスペクトル及び空間分布のデータが得られている(イメージング・ラインサーベイ観測)。
データ量が多く解析を続行中であるが,多数の輝線が検出され,それらの空間分布が描き出された。スペクトルを精査した結果,HN13C分子を検出した。また暫定的ではあるが,NGC 1068では初めての検出となる輝線がいくつか見つかった。
Nakajima et al. (2011) (ApJ, 728, L38)は,野辺山45m望遠鏡による観測で,C2H及びcyclic-C3H2の存在量を調べた。その結果,これらの分子がAGNの影響を受けにくいか,または比較的低温のガス中に存在することを示唆した。今回の空間分布は,これらの分子がAGNから遠いSB ringにも存在することを示した。 また、CNDには2つの分布のピーク(knots)が存在することが知られている。中心(AGN),SB ringから3領域,CNDのknotsの合計6領域において,輝線強度を比較した。その結果,これまでに判明しているCNDとSB ringにおける強度の違いに加えて,CND内の2つのknots間でも強度の違いがあることがわかった。このように、星間化学、および天体物理の観点から興味深い結果が得られた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アルマ望遠鏡のデータ解析が進み、多くの輝線について、その分布、および輝線強度を得ることができた。また、輝線の分子への同定の作業が進み,新たな分子の確認を行うことができた。
さらに,銀河内での領域ごと(AGN, CND knots, SB ring)での輝線強度の比較などが進んだため,上記の判断とした。ただし,存在量や温度などの導出は,今後進めていく予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
アルマ望遠鏡で得られたデータの解析をさらに推進する。
具体的には,帰属ができていない輝線があるため,ノイズとの区別をつけることを含め,それらの輝線の分子への帰属をさらに進める。各分子の存在量や回転温度を回転ダイアグラム法などで求め,定量的な解釈を行う。その結果を基に、化学反応モデル計算の結果とも合わせて解釈を深め、結果を論文にまとめる。
また,個別分子について注目すべきものがいくつかあり,それらについては速度構造なども含めた詳しい解析を行い,別途論文にまとめることを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由)国際学会への出席がなかったこと,また,論文投稿費が発生しなかったことが,主な原因である。
(使用計画)関連する国際学会に積極的に参加することにより、成果を発表するとともに、関連研究者との議論の機会を持つ。そのための旅費および会議登録料を支出予定である。また、論文投稿を目指す。 さらに、アルマ望遠鏡のデータは容量が大きいため、解析状況を見ながら,貯蔵およびバックアップのための、ハードディスクなどの外部記憶装置の追加購入を行う可能性がある。
|