研究実績の概要 |
国際共同利用装置である大型電波干渉計ALMA(アルマ望遠鏡)の初期運用(Cycle 0~2)で得たセイファート銀河NGC 1068のデータ解析を続行した。今年度は、①活動銀河核(AGN)を取り巻くcircumnuclear disk(CND)領域(直径200パーセク程度)と、爆発的星形成を起こしているリング状の分子雲(直径1キロパーセク程度)内の代表的な観測点に対し、5秒角(約350パーセク)の領域の平均的な分子組成の比較、②CND内のAGN torus、Eastern knot、Western knotという特徴的な場所を中心に0.9秒角(約60パーセク)の領域の平均的な分子組成の比較を定量的に行った。 ①の結果、CNDでスペクトル強度の卓越する分子(CN, HCN, H13CN, HC3N, SiO, SO)がはっきりと見出された。これらは、CND領域がAGNから強力なX線輻射の影響を受けていると同時に、衝撃波の影響により高温になっている可能性を示唆している。 さらに②の結果から、CND内の構造と分子組成の関係を詳しく調べると、東西のノットと中心のトーラスでも分子組成および分子存在量が異なることも分かった。特に、これまでAGNで高い値を示しAGNトレーサーのひとつとされているHCN/HCO+(又はH13CN/H13CO+)の強度比が、東西のノットでは2.3~2.6(同4.9~5.6)と高い値を示した一方、AGNのより近傍にあるトーラスでは1.2(同2.1)程度と逆に低いという興味深い結果が確かめられた。 これらの成果は複数の国際研究会で報告し、現在論文としてまとめつつある。
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