研究実績の概要 |
近傍宇宙にある爆発的星形成銀河の電波観測を行い、新しい星形成指標を用いて星形成則を探ることが本研究の主目的である。平成29年度は、天体観測データのさらなる解析と結果の公表を中心とした研究活動を行った。 アルマ望遠鏡による観測データの処理と解析を継続し、従来得られたものよりも高い角分解能で水素再結合線の空間分布を得ることに成功した。水素再結合線データから実際に星形成率を導出したのみならず、データ中に含まれる分子輝線スペクトルを解析することで、爆発的星形成銀河の中心には多様な物理的・化学的性質を持つ複数の星形成領域が存在することを見出した。とりわけ、多種の高温分子ガスが放射する輝線がスペクトルを隙間なく埋め尽くす「分子の密林」と呼べる状態にある星形成領域の存在が明らかになったことは天文学研究者の関心を惹くのみならず、プレスリリースを通して広く一般の注目も集めた(https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2017/5614/)。 前年度および当年度中に得られたこれらの成果は、二度の国際研究集会("Measuring Star Formation in the Radio, Millimetre, and Submillimetre", 2017年7月、英国; "ALMA Long Baseline Workshop"、 2017年10月、京都)および国内学会(日本天文学会秋季年会)において発表した。これらの結果をまとめた最初の学術論文が英文専門雑誌に受理され、出版された(Ando, Nakanishi, Kohno他, 2017)。 国外の研究者と共に爆発的星形成銀河に対する水素再結合線の観測研究も推進し、その成果も英文専門雑誌に査読付論文として掲載された(Bendo, Miura, Espada, Nakanishi他, 2017)。
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