研究課題/領域番号 |
15K05038
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
相馬 充 国立天文台, 光赤外研究部, 助教 (30187885)
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研究分担者 |
上田 暁俊 国立天文台, JASMINE検討室, 助教 (30332159)
谷川 清隆 国立天文台, 理論研究部, 特別客員研究員 (80125210)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地球自転変動 / 日月食・星食 / 気候変動 / 位置天文学 / 歴史天文学 |
研究実績の概要 |
古代の地球自転変動を調査するには、地球自転の遅れを示すパラメーターΔTの値を多くの年代に対して求めることが必要である。そのためには世界各地の古代の日月食・星食等の天文現象の記録を収集し、観測記録かどうかを吟味する必要がある。この目的で、年1回ずつ東アジアなど数カ国の古代天文記録の研究者を国立天文台に招き研究会を開催している。平成29年度には2018年3月22日から24日まで第5回「歴史的記録と現代科学」研究会と題する研究会を開催し、日本・中国・韓国・インド・ニュージーランド・ベルギーの研究者を招いて各国の古代天文記録の収集状況を確認し、今後の研究方針と研究協力について議論した。また、平成28年度に開催した「第6回天文学史研究会」の集録を2018年2月に発行した。 インドとニュージーランドを訪問し、歴史的資料および口承伝説の中に日食記録を見いだし、それを利用することの有用性を確認した.その調査により,15世紀初頭の地球自転変動を精度良く決めることができた。 平安時代中期に書かれた御堂関白記に記録された時刻を調査し、その時刻制度を確定した。その結果、当時の具注暦に記された日出入時刻は2~3分以内の精度があることが判明した。これは従来の研究者が精度が悪いとしていたことに反する重要な結果で、当時の時刻制度についての彼らの理解が間違いであったことを示すものである。 古代天文記録を計算するために作成した計算機プログラムを応用してプトレマイオスによるアルマゲストに書かれている惑星の軌道についての研究をも続けている。火星の軌道傾斜角の導き方に不備がある点については、まもなく発行される第7回東洋天文学史国際会議(ICOA-9)の集録にその研究結果が収録される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
日本を含む東アジアの古代日月食記録収集は中国・インド・韓国等の研究者の協力のもと、順調に進められている。ただし、発掘された日月食記録のデータが観測記録か予測記録かを判定するのに予想以上の時間が掛かったことと、「平成29年度機構間連携・異分野連携研究プロジェクト」にも採択され、そちらの研究に時間を割かなければならなかったことのため、地球自転変動と気候変動の相関に関する研究は予想した段階まで進められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
各国の古代日月食・星食記録を用いて地球自転角パラメータの値を求める研究をさらに進め、自転速度変動の精度を高める。それにより、自転速度変動が、海水面変動などの気候変動の時期と相関があるかどうかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度には「平成29年度機構間連携・異分野連携研究プロジェクト」にも採択され、その研究費によりそちらに関連する研究に時間を割かなければならなかったため次年度使用額が生じた。次年度使用額を使って、過去の地球自転速度変動の精度を高める研究を続け、さらに自転速度変動が海水面変動などの気候変動の時期と相関があるかどうかを検討する。
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