分子雲が分子雲衝突や大質量星からのフィードバックを起源とする衝撃波によって圧縮を受けた際に衝撃波圧縮層でどのように高密度分子雲フィラメント(星形成直前段階の分子雲構造)が形成されるのかについての研究を行った。手法としては3次元の等温磁気流体シミュレーションを用いた。現実に発生し得る条件の範囲で衝撃波強度や初期密度構造、初期乱流速度構造を変化させながらシミュレーションを繰り返した結果、分子雲フィラメント は以下の3つのメカニズムによって生成されることが明らかとなった。i) 衝撃波が強い場合(概ねマッハ数20以上)ではInoue & Fukui (2013)で提唱された爆縮機構によって大質量フィラメントが形成される。ii) 衝撃波が弱い場合(概ねマッハ数20以下)は分子雲に内在する乱流起源の圧縮によってフィラメントが形成される。iii) 衝撃波も乱流も弱い場合は衝撃波圧縮層が長時間かけて自己重力の作用で分裂することでフィラメントが形成される。これらの結果から、本研究課題で特に興味がある大質量星の形成過程としてはマッハ数が概ね20以上の強い衝撃波が必要であり、そのような天体現象としては分子雲衝突や巨大シェルによる分子雲の圧縮が示唆されることが明らかとなった。 さらに、大質量星団の形成を理解するために、近年観測的に注目されている中性水素ガスの高速衝突の3次元磁気流体シミュレーションを行った。その結果、中性水素ガスが概ね100km/s程度の速度で衝突すると、衝撃波圧縮層の内部に高密度分子雲が生成され、それが自己重力で即座に崩壊することで大質量星団の母体となり得るような超高密度でコンパクトな星形成分子雲が形成されることが明らかとなった。これは大質量星団の起源として、銀河間相互作用による高速ガス流の生成が重要であることを示しいている。 上記の2つの成果を公開するために現在論文を執筆中である。
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