研究課題/領域番号 |
15K05040
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
廣瀬 重信 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 数理科学・先端技術研究分野, 主任研究員 (90266924)
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研究分担者 |
佐野 孝好 大阪大学, レーザーエネルギー学研究センター, 助教 (80362606)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 重力不安定 / 原始惑星系円盤 / 輻射輸送 |
研究実績の概要 |
本研究は、降着円盤の基本方程式の解を「第一原理」から求め、多様な降着円盤の熱力学的性質を「熱平衡曲線」によって体系化して理解することを目的とする。ここで「第一原理」とは、降着円盤を駆動するシアストレスの起源である流体力学不安定と、主要な冷却過程である輻射輸送を、「パラメタリゼーション」を用いずに、直接数値計算を用いて取り扱うことを意味する。平成28年度は、重力不安定が駆動する降着円盤について、特に、中心星からの可視光照射を受ける原始惑星系円盤を対象として研究を進めた。具体的には、中心星からの距離を50天文単位に設定し、面密度と中心星からの可視光照射角度の2つをパラメータとして、重力不安定の非線形発展を調べた。その結果、ある特定の面密度範囲で、重力不安定が駆動する密度波の散逸と輻射冷却の釣り合いがとれた「重力乱流」状態が維持されることがわかった。その面密度範囲の上限値は、(降着円盤での重力不安定を規定する)Toomreパラメータが0.7に相当しており、Toomreパラメータが0.7以下での重力乱流状態は維持されないことを意味している。一方、先行研究で、重力乱流状態と円盤分裂の境界を決めるパラメータとして議論されてきた冷却時間については、本研究では、面密度に依存せずにほぼ一定値をとり、上記の面密度範囲の上限値とは無関係であることが示唆される。また、可視光照射角度に関しては、0.32ラジアンを超えると、赤道面近傍のガス温度が可視光照射による加熱の影響を受けて上昇することにより、重力乱流は弱められることがわかった。これらの結果をまとめた論文は、査読付き学術誌であるMonthly Notices of the Royal Astronomical Society誌に投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における研究対象は、大別すると、(A)磁気乱流が駆動する降着円盤と、(B)自己重力乱流が駆動する降着円盤の2つである。(B)については、平成29年度に研究を行う予定であったが、平成27年度に行ったテスト計算の結果が順調であり、また競合する研究が複数あり出来るだけ早く出版する必要も出てきたため、平成28年度に前倒しで研究を進めている。一方、(A)の残りの課題(活動銀河核降着円盤と原始惑星系円盤)についても、平成29年度に研究を行うために必要な予備計算を並行して進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究における研究対象は、大別すると、(A)磁気乱流が駆動する降着円盤と、(B)自己重力乱流が駆動する降着円盤の2つである。最終年度である平成29年度は、平成28年度に行った(A)の研究をさらに推し進めて完成させる(すでに主な計算は終わっているので、出版論文としてまとめる)、とともに、(A)の残りの課題(活動銀河核降着円盤と原始惑星系円盤)について、平成28年度に行った予備計算をもとに、研究を進める。研究計画に変更はないが、優先順位は(B)、(A)とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた国外旅費のうちの一部が、出張先の負担で済んだため。
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次年度使用額の使用計画 |
共同研究者との研究打ち合わせのための、国外旅費または国内旅費として使用する。
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