研究課題
本研究は、有限温度・有限密度QCD相構造とクォーク物質の熱力学的諸性質を、ウイルソン型クォークを用いた格子QCDシミュレーションにより導くことを目的としている。2018年度は、2016-2017年度に行った研究を発展させ、現実のクォーク質量での研究と格子間隔を変えたシミュレーションを推進した。2016-2017年度の研究では、グラジエントフローに基づく鈴木法による状態方程式計算をフルQCDで初めて実行する研究として、計算時間を抑えるために、sクォーク質量は現実の値に近いがu,dクォークは現実より重い場合を扱い、格子間隔が1つだけの固定格子間隔法による計算を実行した。格子化誤差の小さいNt>8で従来の方法による状態方程式を再現することを示し、カイラル感受率がクロスオーバー温度でピークを示すことをウイルソン型クォークとして初めて示した。また、位相感受率を評価し、アクシオン質量がインスタントン模型の予想と一致する温度依存性を持つことを示した。これらは、グラジエントフロー法が、QCDの熱力学的性質を研究する上で極めて強力であることを示唆している。これを受け、2018年度には、次の段階として、現実のクォーク質量での研究と格子間隔を変えたシミュレーションを推進した。現実のクォーク質量での試験研究により、相転移温度がスタガード型クォークを用いた先行研究に近い140MeV近傍を示唆する中間結果を得た。ただし、相転移温度近傍の統計がまだ十分ではなく、信頼できる結果を得るためには、さらなるシミュレーションが必要であり、現在、配位生成と解析を進めている。並行して、グラジエントフロー法のマッチング係数における高次項の効果や、エネルギー運動量テンソルの相関関数の研究なども推進した。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 7件)
Proceedings of Science (LATTICE2018)
巻: 164 ページ: 0-6
Study of energy-momentum tensor correlation function in Nf=2+1 full QCD for QGP viscosities
巻: 166 ページ: 0-6
巻: 173 ページ: 0-6