研究課題/領域番号 |
15K05042
|
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
近藤 慶一 千葉大学, 大学院理学研究院, 教授 (60183042)
|
研究分担者 |
柴田 章博 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 研究機関講師 (30290852)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | クォーク閉じ込め / ウイルソンループ / 真空凝縮 / 束縛状態 / Bethe-Salpeter方程式 / 複合演算子 |
研究実績の概要 |
1. 明白にローレンツ共変なゲージ固定でのヤンミルズ理論に質量項を加えた理論においてグルーオンとゴーストから成る2体の束縛状態を調べるために,経路積分量子化の枠組みで複合演算子に対するCornwall-Jackiw-Tomboulisの有効作用を用いてグルーオンとゴーストの同時束縛状態に対するBethe-Salpeter方程式を系統的に導出した。次に,梯子近似で方程式を解いて,束縛状態に相当するBethe-Salpeter振幅の数値解を求めた。ゴーストが如何にグルーオン2体束縛状態に影響するかを調べた。また,この解が負のベータ関数で見られる漸近自由性とコンシステントであることを示した。 2. 2重に巻いたループに対するウイルソンループ演算子の真空期待値の振る舞いを調べることは,正しい閉じ込め機構が何であるかを判定する一つの手段となることがゲージ群がSU(2)の場合に示されていた。これを拡張し,多重巻きのウイルソンループをSU(N)ヤンミルズ理論で考えることで様々な閉じ込め機構を分類,精査できることを例示し,物理的意味を与えた。 3. グルーオン場から構成されるゲージ不変な質量次元2の複合演算子の真空期待値が非ゼロ,つまり真空凝縮が存在することを示すことは,クォーク閉じ込めに関する様々な現象を解明する上に極めて重要な課題であり以前からその遂行が望まれていた。今回は,共変ゲージ固定したSU(N)ヤンミルズ理論において摂動1ループの範囲で,この複合演算子のゲージ不変性に替わるBRST不変性と複合演算子としての繰り込み可能性を示したうえで,補助場の方法を用いて対応する有効ポテンシャルを求め,それが非自明な極値を持ちうることから真空凝縮の存在を示唆する結果を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の進展によって,当初の計画より取り組むべき項目が多岐にわたったため,一つ一つの項目に十分な時間をかけることが難しくなったが,研究が当初の予想より大きな広がりを持つようになり将来的にはより大きな成果に結びつくと考えられるようになったことは,その点を補って余りある成果と言える。
|
今後の研究の推進方策 |
1.多重巻きのウイルソンループ期待値に関する考察は,必然的に高次表現に属するウイルソンループ期待値,つまり,高次元表現に属すクォーク間ポテンシャルの考察という今後取り組むべき重要な研究課題に導く。 2.グルーオン場から構成されるゲージ不変な質量次元2の複合演算子に起因する真空凝縮が存在することを,1ループを超えた取り扱い,特に,非摂動的な方法で系統的に改良していくことが望まれる。一つの方法は汎関数繰り込み群であり,もう一つは最近発展させられたグラディエント フローである。 3.ヤンミルズ理論の閉じ込め相を研究する一つの方法として,スカラ場ーの動径自由度を固定したゲージ-スカラー模型に変形して調べる方法が考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
4月1日から9日の外国出張に使うために残した。この期間は正確には次年度ではあるが本年度に得られた最新の研究成果を発表するのに最適の会議であり,また,年度当初には知り得なかった会議のために,他の会議に使用するより有意義であると判断した。
|