任意の数の中性および荷電ヒッグス粒子を含む一般化されたヒッグス有効理論(GHEFT)を構築し、非最小な電弱対称性の破れ模型を記述した。GHEFTの幾何学形式でのラグランジアンを用いることで、スカラー粒子の散乱振幅が非線形シグマ模型のスカラー多様体上のリーマン曲率テンソル(幾何学)とポテンシャル項の共変微分で記述されることを明らかにした。電弱精密測定パラメータであるSおよびUパラメータへの1ループ輻射補正における発散項についても、スカラー多様体の対称性を記述するキリングベクトル場とリーマン曲率テンソルで記述されることを見出した。このことにより、ヒッグス粒子と縦波ゲージ粒子の散乱振幅のツリーレベルユニタリティー条件が、スカラー多様体が平坦であることを要求することが示され、電弱精密測定パラメータの1ループ有限性の条件と散乱振幅のツリーレベルユニタリティー条件の関係を明らかにした。すなわち、一旦なんらかの方法でスカラー散乱振幅のツリーレベルユニタリティーが保証されると、電弱精密測定パラメータSとUの1ループ有限性が自動的に保証されることが見出された。 この発見をさらに2ヒッグスダブレット模型やジョージャイ・マハチェック模型、さらに南部ゴールドストンヒッグス模型等に適用し、スカラー多様体の幾何学を使った散乱振幅の評価式を得た。 一般にヒッグスセクターの低エネルギー有効理論による解析では、場の再定義による不定性が存在し、同種の物理が一見異なったラグランジアンで記述されてしまうという問題点が存在するが、スカラー多様体のリーマン曲率テンソルやポテンシャル項の共変微分といった幾何学的な共変量に着目することで、このような不定性の存在しない解析への道筋をつけることができた。
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