自然な大統一理論に関する研究としてこの研究期間全体を通した成果を、計画の2本柱である宇宙史の構築と実験からの制限に分けて説明する。 まず、実験からの制限に関して述べる。E6大統一理論も予言する「自然な超対称性」に対する電気双極子モーメントからの制限は、一般的にはとても強く自然な理論にはなれないことを示した上で、E6大統一理論のシナリオでは問題ないことも示した。このことは特に軽いストップが発見されたときにE6大統一理論を示唆する重要な研究となる。一方、陽子崩壊もフレーバーを変える陽子崩壊がE6大統一理論では起こりやすいことを示した。 次に宇宙史の構築について述べる。E6大統一理論においては、一見困難と思える熱的レプトン生成シナリオがうまく働くことがわかった。また、普段は小さいと無視される高次元項がプリヒーティング等の際にも重要な役割をしうることがわかった。ダークマターを理解するために超対称性の破れを理解する必要がある。したがって、自然な大統一理論において、同時に超対称性を自発的に破るシナリオ構築を行うとともにそのシナリオが予言されるダークマターの候補を提案した。 最後に最終年度に行った研究の成果について述べる。SO(10)を統一群とする自然な大統一理論において、超対称性を自発的に破る模型構築を行うとともにその宇宙論的な問題を議論した。この模型は、超対称標準模型の範囲内ではビーノが最も軽くなることが予言し、もしビーノが最も軽い超対称粒子(LSP)だとすると、熱的残存量が多すぎる、という問題が生じる。自然な大統一理論に存在しているアクシオンの超対称パートナーであるアクシーノをLSPとすると、この問題を回避できることがわかった。同時に、グラビティーノ問題も、熱的に生成した大量のビーノがアクシーノと光子に崩壊する際に生じる大量のエントロピーによって解決できうることがわかった。
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