研究課題/領域番号 |
15K05054
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山口 哲 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (90570672)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 場の理論 / 弦理論 / 共形場理論 / アノマリー / 境界 / 欠陥 |
研究実績の概要 |
場の理論での重要な概念の一つにアノマリーがある。特に、大域的対称性に対する背景ゲージ場(曲がった時空を含む)を導入したときのアノマリーは't Hooft アノマリーと呼ばれ、繰り込み群で不変な量であるため、理論の相構造を調べる際の強力なツールとなる。またアノマリー流入現象など、境界や欠陥を考える際にも重要な役割を果たす。 近年物性理論においてSPT相(Symmetry Protected Topological phase)が注目を浴びている。特にその境界に現れる理論のアノマリーを用いてSPT相を分類する方法が有力である。このため、これまで注目されることが少なかった様々なアノマリーに関する理論が急速に進展している。 アノマリーに関して特に重要な数学的概念の一つが指数定理である。特にSPT相とその境界の理論に関してはAtiyah-Patodi-Singer(APS)の指数定理が関係すると考えられている。しかしAPS指数定理に現れる境界条件は非局所的であり、物理的にSPT相に現れる境界条件とは異なっている。そこで我々は質量の符号が反転するようなドメインウォールを考えた。この場合、物理的な境界条件は自然に現れる。さらにこのような系のフェルミオン行列式の符号に現れる指数はAPSの指数と同じものであることを示した。 SPT相の境界の理論にはアノマリーがあるが、そのさらに境界は存在することが出来ない。このため、アノマリーがあることと境界が存在することが出来るかどうかは深い関係があると考えられている。我々はWess-Zumino-Witten模型で中心対称性とモジュラー不変性に関するアノマリーについて、境界との関係を考察した。その結果、素朴にはこの関係は成り立たないこと、そして境界の対称性として荷電共役を合わせた変換を考えた場合にはこのアノマリーと境界の関係が成り立つことを発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は境界や欠陥をもつ場の理論に関してアノマリーの観点から研究を進めてきた。曲がった時空、あるいは境界や欠陥をもつ時空の場の理論に関して、アノマリーの観点は強力なツールを与えることを再確認し、興味深い成果を得ることができた。
昨年度から続けている共形場理論の新しい手法を用いた研究も同時に進行している。アノマリーの研究と合わせて成果を出しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究を通じてアノマリーの観点は非常に有用であることが分かったので、続けてこの方面の研究を続けていく。特に欠陥と関係が深い高次形式対称性を含むようなアノマリーに注目し、その流入や指数定理などについて調べる。
また、昨年度から続けている共形場理論の新しい手法を用いたアプローチも続けていく。特にアノマリーの観点からの研究と合わせることにより、ブレイクスルーがあることを期待している。また数値ブートストラップの手法は非常に強力であることが知られているので、これを欠陥のある共形場理論に適用したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
別の用務の関係で研究発表のための出張が予定していたほどできなかったため、旅費の使用額が予定より少なくなった。
次年度は主に研究発表や研究打ち合わせなどの旅費に使用する。
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