研究課題/領域番号 |
15K05058
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
安田 修 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (50183116)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ニュートリノ振動 / 標準模型を越える物理 / フレーバー混合 / 非標準的相互作用 / ニュートリノの質量 |
研究実績の概要 |
ニュートリノ伝播に非標準的相互作用が寄与する場合、ニュートリノの伝播中の物質効果が修正を受けるが、今の所、その成分のうち、電子・タウ(ミュー)成分に対する制限が今後の世界の弱い(強い)ことが知られている。現在計画されている長基線加速器ニュートリノ実験は日本のT2HKと米国のDUNEが主なものとなっているが、現実的なシナリオの範囲内でこれら長基線実験による非標準的相互作用への制約を議論するには、ミュー成分を無視して電子・タウ成分のみを残して議論をするのが適当である。そこで、その近似のもとで、かつ高エネルギー大気ニュートリノからの制約をも考慮に入れて非標準的相互作用の電子・タウ成分に対するT2HKとDUNEの感度について、統計誤差のみを考慮して議論した。結果は、近未来のハイパーカミオカンデによる大気ニュートリノ観測には勝らないことがわかった。 一方、太陽ニュートリノと長基線原子炉ニュートリノ実験のカムランドの質量自乗差に違いがあることが最近指摘されており、その違いを非標準相互作用からのニュートリノの物質効果による効果ではないかという説がある。この質量自乗差の違いは、標準的な三世代の枠組みからのずれ、ひいては新しい物理の可能性を示唆するデータであり、この仮説の検証は重要である。そこで以前我々が大気ニュートリノで非標準的相互作用を探索することを議論した研究を、太陽ニュートリノの解析に使われているパラメーターに焼き直し協力研究者の首都大大学院生深澤氏とともに、再度行った。結果は近未来のハイパーカミオカンデの場合には統計量の多さから上述の仮説をかなりの信頼度でテストできることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニュートリノ振動現象の解析的・数値的研究に関して、大体当初の計画通りに進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、大気ニュートリノ観測・長基線実験において、新物理の効果を、標準的なニュートリノ振動からのずれとして観測する際の一般論、新物理があった時のパラメーター縮退((3+1) ースキームのステライルニュートリノやニュートリノの伝播中の非標準物質効果 がある場合)の研究を、より現実的な効果を取り入れて定量的に進めて行く予定である。一方、減衰がある場合のニュートリノの伝播の効果について、さらなる研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
7月の海外出張の航空運賃が当初の計画よりも安くなったために、残金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
この残額を含め、今年度も、昨年に引き続き、国際会議等で研究成果の発表を多くするために、国内・海外への旅費と会議参加費にほとんどの予算をあてる予定である。
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