ニュートリノの伝播中の物質効果は、ニュートリノのフレーバーに依存する非標準相互作用が存在する場合には修正を受け、物質中でのニュートリノ振動現象に影響が出ることが知られている。近年、太陽ニュートリノと長基線原子炉ニュートリノ実験カムランドの質量自乗差に違いがあることが指摘されており、その違いが非標準相互作用からのニュートリノの物質効果によるものではないかという仮説がある。地球上でのニュートリノ振動実験における物質効果は、基線長が約1000km以上でないと顕著にならないことが知られている。大気ニュートリノの観測は、地球の直径規模の長基線のニュートリノ伝播を調べているので、物質効果に非標準的寄与があるかどうかを見るのに適している。一方、将来計画として議論されているT2HKK実験とDUNE実験は加速器ニュートリノにより1000km以上の基線長で行う長基線実験で、ニュートリノと反ニュートリノを別々に測定できる長所がある。この研究では、将来のハイパーカミオカンデにおける大気ニュートリノ観測実験とT2HKK実験・DUNE実験が非標準相互作用に対してどれだけの感度があるかを議論した。その結果、ハイパーカミオカンデ(HK)の大気ニュートリノの観測は統計量の多さから上述の仮説をかなりの信頼度でテストできること、一方、長基線実験の感度はHKの大気ニュートリノ観測ほどは高くないが、T2HKK実験の感度はビームの中心からのずれの角度が小さいほど感度が改善し、標準的と非標準的な2つにCP非保存位相に対する感度は、T2HKK実験の方がアメリカのDUNE実験よりも良いことがわかった。又、標準的枠組みにおいてニュートリノの質量階層性、π/4-θ(23)の符号、CP非保存位相δに対する上記HK・T2HKK・DUNEの各実験の感度も議論した。
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