ゲージ理論と関連する量子対称性とその極限をしらべ、ゲージ理論の可積分構造を解明することを本研究は目指しました。2次元の可積分な場の理論で、変形Virasoro代数や変形W代数を対称性としてもつものは、5次元の超対称ゲージ理論と深いつながりをもつことが、明らかになってきたためです。 そこで、まず2次元理論側で変形Virasoro代数の頂点演算子を決定し、変形相関関数の自由場表示を得ました。変形Virasoro代数だけでは、頂点演算子の定義にあいまいさがありましたが、2次元/5次元対応を手掛かりにして、5次元SU(2)超対称ゲージ理論の分配関数と変形相関関数が一致するという要請で、その形を求めました。 また、最終年度において、楕円量子代数の表現とそのパラメータのベキ根極限を調べました。量子楕円代数のレベル1表現空間には、変形Virasoro代数や変形W代数が作用することが知られています。 そこで、楕円量子代数が、5次元超対称ゲージ理論のダイナミカルな対称性であるという予想のもと、sl(2)代数にもとづく楕円量子代数のレベル1表現とそのベキ根極限を解析しました。レベル1表現を具体的に自由ボソン表現として構成しました。そして、楕円代数に含まれる2つの変形パラメータをうまく1のベキ根に近づけると、パラフェルミオン場と自由ボソン場が現れることを明らかにしました。 これらの場を用いて、パラVirasoro対称性をもつ2次元の共形場理論を構成できます。そして、5次元ゲージ理論側では、ベキ根極限によって、4次元ALE空間上の超対称ゲージ理論になります。我々の研究の帰結として、パラVirasoro共形場理論と、ALE空間上の超対称SU(2)ゲージ理論の対応が、2次元/5次元対応から自然に導けることが示されたわけです。
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