理化学研究所・ブルックヘイヴン国立研究所・コロンビア大学との格子量子色力学(lattice QCD)共同研究(RBC共同研究)と連合国格子量子色力学共同研究(UKQCD共同研究)が合同で生成している2+1フレイヴァー・ドメインウォール法格子QCDアンサンブルのうち、格子切断運動量を約1.4GeV/c、パイ中間子質量を約250MeVおよび170MeVに設定したふたつと、格子切断運動量を約1.7GeV/c、パイ中間子質量をほぼ現実の値の約140MeVに設定したひとつのアンサンブルを使った核子構造の数値計算研究を継続した。
格子切断運動量を約1.4GeV/c、パイ中間子質量を約250MeVおよび170MeVに設定したふたつのアンサンブルについては核子のアイソベクトル極性流荷電gV、同軸性流荷電gA、同テンソル結合gT、同スカラー結合gSの計算を完了した。極性流荷電gVについては計算統計誤差の範囲で正常であることを確認した。軸性流荷電gAでは計算値が実験値とくらべて10%程度過小であることを確認し、その原因についての分析も報告した。テンソル結合gTについてはより重いパイ中間子質量ではみられた質量依存性が消えることを確認した。スカラー結合gSにも質量依存性がないことを確認した。これらについて報文を出版した。
格子切断運動量を約1.7GeV/c、パイ中間子質量をほぼ現実の値の約140MeVに設定したアンサンブルでも同じく核子のアイソベクトル極性流荷電gV、同軸性流荷電gA、同スカラー結合gS、同テンソルgTの計算を継続した。アイソベクトル極性流荷電gVでは前年度に初めて検出された核子励起状態の混合に由来すると考えられる異常値の分析を深めた。アイソベクトル軸性流荷電gAでは計算値が実験値とくらべて5%程度過小になる状況の分析を深めた。これらについて格子上の場の理論国際会議で報告した。
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