研究課題/領域番号 |
15K05066
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
岡田 安弘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 理事 (20212334)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 素粒子物理学 / ヒッグス粒子 / クォーク / TeV領域 / 標準模型を超える物理 |
研究実績の概要 |
平成30年度に引き続き、重いクォークのパートナー粒子が複数含まれるような場合に関する現象論的な研究を進めた。この研究は、Lyon第一大学、デリー大学などの共同研究者のチームとここ数年来実施している一連の研究プロジェクトの一部である。素粒子標準模型を超える理論では、しばしばベクターライクな余分なクォーク導入される。このような模型では特に余分に導入したクォークが標準模型の3世代のクォークとどのように混合するかによって、模型に対する現象論的な制限やLHC実験での検証の可能性に違いがでる。平成30年度に発表した論文ではベクターライクのクォーク2重項を2つ導入した場合を扱ったが、令和元年度はボトムクォークの重いパートナーを持つ模型について解析を進めた。 ヒッグスと重いクォークの物理は、将来のILC実験でも重要なテーマである。平成30年度に引き続き、標準模型有効場理論の枠組みを用いたヒッグス結合に現れると期待される標準模型を超える物理の効果の探索において、終状態にヒッグス粒子を含まない反応も含め色々な物理量の測定がどのような役割を果たすのか、特にビーム偏極の効能を中心に解析を進めた。また、ヒッグス結合測定と組み合わせた軽いヒッグシーノ研究に関する解析を完成した。これらの研究により理論家と実験家が協力してILCプロジェクトの意義をより明確にする研究の推進に寄与した。特に、令和元年度に進められた欧州素粒子物理戦略のアップデート策定の物理検討にこれらの結果をインプットとして役立てることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度には、重いクォークセクターの有効相互作用について、共同研究者である、Aldo Deandra氏、Naveen Gaur氏、原田大輔氏らと協力して、余分なクォークが2種類以上存在する場合について論文にまとめ、JHEPに出版した。平成30年度には第2論文を作成しJHEPに出版した。平成30年度の途中からは、原田大輔氏を非常勤研究員として雇用し、共同研究を強力に進める体制を整えた。令和元年度は、この研究の最終年度であることから、研究のまとめと今後の共同研究の方向性を探るため研究協力者の外国出張を予定していた。新型コロナウイルス感染の拡大のため出張が中止となり、研究期間を令和2年度まで延長したが、概ね当初の計画通り研究を進んでいる。 ILC計画についての研究は、実験家との連携を深めながら進めてきた。当初から、LHC実験の進展状況を取り入れながら研究を進める計画であった。LHC13TeV実験結果を踏まえて、ILC計画を重心系エネルギー250GeVのヒッグスファクトリーとする国際的合意ができた。国際研究者コミュティはヒッグスファクトリーが次世代高エネルギー実験計画として最重要であるとの見解を示しており、この研究の成果は、欧州素粒子戦略アップデートや国際将来加速器委員会のILC計画進めかたの議論の基になる物理検討結果として役立てることができた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルス感染の拡大のため研究協力者が予定していた出張が中止となり、研究期間を令和2年度まで延長し研究を続けることとした。今年度は本研究の最終年度であるため、これまでの研究を総括し、今後の課題を明確にして、共同研究をどのように進めるべきかを決める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大のため、共同研究遂行を目的とした研究協力者の海外出張を中止せざるを得なくなった。それに伴い、研究計画を見直し、期間を延長して研究を実施することとした。延長した期間で研究全体のまとめを行い、今後の共同研究の方針について研究協力者と議論する。経費の大部分は、非常勤研究員の雇用の延長、研究代表者、研究協力者などの旅費として使用する予定である。
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