研究課題/領域番号 |
15K05069
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
寺澤 敏夫 国立研究開発法人理化学研究所, 階層縦断型基礎物理学研究チーム, 研究員 (30134662)
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研究分担者 |
浅野 勝晃 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (80399279)
三澤 浩昭 東北大学, 理学研究科, 准教授 (90219618)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 中性子星 / パルサー / 星間乱流 / 電波伝搬 / 高速電波バースト |
研究実績の概要 |
約50年前に発見された回転中性子星・電波パルサーのパルス輻射機構、およびそのパルスの伝搬過程を支配する磁気圏内・パルサー星雲内のプラズマ乱流機構は依存として謎につつまれ未解明のままである。我々は、2014年以来、飯館における325MHz帯観測、鹿島における1.4-1.7GHz帯観測を中心としたCrabパルサーの国内多周波同時観測を企画・実行してその謎の解明を目指してきた。平成28年度は、(1)諸外国の観測陣によりATEL報告のななされたCrabパルサー観測史上最大のグリッチ(星の自転周波数の突発的増大、2017.11.7)について、日本のデータに基づいた研究、(2)巨大電波パルス発生とX線パルスの相関の有無の検出に向けての準備、を行った。 (1)について、我々は名大豊川観測所の300MHz帯データなどを解析して、グリッチの発生の確認を行い、周波数ジャンプ量、グリッチ後の周波数変化率(一次、二次、三次)などの決定を行った。これは日本独自のデータに基づくものとしては、初めてのグリッチ現象の観測的研究であり、今後、中性子内部と磁気圏の結合の物理的メカニズムの解明に寄与すると期待される。 (2)については、2017年8月、11月、12月、2018年1月、3月と5回のべ6日におよぶ電波・X線同時観測を企画・実行した。電波データの1次処理はほぼ完了し、2018年5月現在、X線データの公開待ちとなっている。 さらに、上記の観測を中心とした研究と相補的な理論的研究を行い、パルサー星雲へのエネルギー注入プロセスについて新しい知見を得た。また、パルサー巨大電波パルスと類似した現象として注目を集めている高速電波バースト(FRB)について、日本の観測に基づく検出可能性について検討を続けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Crabパルサーのグリッチ現象の解析は、日本の研究グループにとって初めての経験であったが、独自のデータ処理体制を構築し、諸外国と肩を並べる結果を得ることができた。 電波・X線データの相関解析の進行が遅れているが、これは米国側のNICERデータ公開作業の遅延によるもので、2018年度中には解決の見込みである。さらに、2018年3月にはChandra以外の全てのX線衛星のCrab較正観測と、地上電波観測を同期させて行う一大キャンペーン観測が行われ、我々は電波観測の中核を担うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
グリッチの研究を継続し、これまでに解析の済んだ2017年末までのデータに加え、2018年1月以降のデータの解析を行い、発生後、数十日~数百日におけるグリッチ回復相の様相を明らかにする。さらに国際的なデータ交換を実現し、グリッチ発生後、数十時間以内の周波数変化特性の精密観測を実現させたい。 電波・X線データの相関解析を継続する。我々の用いるNICERによるX線光子統計量の多さは過去に類を見ないもので、我々の解析により、相関の有無について決定的な結論が得られると期待される。さらに2018年3月の電波・X線同時一大キャンペーン観測のデータ解析を継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたのは次の2つの理由により研究期間を1年延長したためである。 〇2017年8月以降のCrabパルサーの電波・NICER X線同時観測データ解析について、米国側のNICERデータ公開準備が遅れており、実際のデータ処理を2018年度に実行することになった。 〇2017年11月にCrabパルサーの観測史上最大のグリッチ(自転周波数の突発的増大)が発生した。グリッチ回復には数か月以上かかると見込まれることから、2018年度にも観測とそのデータ処理を延長して行うことになった。
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