2022年度に本研究課題研究代表者(以下「研究者」)が著者となった論文は20本あり、そのうち本研究課題に関わるパルサー探索についての論文は6本あった。これらの20本の論文には日本の重力波検出器KAGRAの現状報告・成果報告の論文4本も含まれる。これほど多い論文が出版された理由は、2020年3月に終了したLIGO-Virgo-KAGRA (以下「LVK」)第3次重力波観測(O3)の成果の発表が、研究者の所属するLVKコラボレーションより相次いだためである。第3次観測までで合計90の重力波イベントが観測されているが、それらはすべて連星合体現象からの重力波イベントである。2023年5月末より開始予定の第4次観測においては、連星合体現象からの重力波の検出にとどまらず、研究者の研究課題としているパルサーなどからの連続重力波が検出されることを期待している。パルサーからの連続重力波を検出できれば、中性子星の状態方程式への制限、パルサー自転軸の傾き、歳差運動の有無、中性子星の空間分布などについて知見が得られると考えられている。また、連続波探索の応用として暗黒物質探索が考えられている。研究者はこれらの研究について、LVK連続波探索グループのKAGRA代表の共同議長として管理運営の役に携わっている。上記研究のほか2022年度は、独立成分分析を用いた重力波検出器雑音除去手法についての報告、データ解析の新しい手法として2017年頃から活発に研究されている深層学習を用いた雑音分類などについて論文発表をおこなった。
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