研究課題/領域番号 |
15K05075
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瀬戸 直樹 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80462191)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 階層的三体系 |
研究実績の概要 |
本年度は大学院生と協力の上、階層的三体系に対する古在効果の進化を調べた。具体的には1)中心巨大ブラックホール、2)その周りの星団、3)遠方から徐々に中心ブラックホールに落下する第2の巨大ブラックホールの三要素からなる系を考えた。
星の運動にはケプラー運動に対する補正として相対論的な近点移動効果、星団のポテンシャルに起因する近点移動効果双方を取り入れた。これにより、初期に第二のブラックホールが遠方にある際には古在機構が近点移動により抑制されている。しかし、落下に伴い、徐々に第二ブラックホールの重力が効いてくると、位相空間上にseparatrixの分岐が生じ、その結果力学的に興味深い遷移現象が発現することを発見した。
さらにこの遷移現象に対して断熱不変量の議論を適応して、幾何学的に系の進化をとらえる手法を開発し、微分方程式を数値的に解いた結果を非常によく再現することを示した。ここまでの結果を論文としてまとめるとともに、引き続いて、相対論的効果、星団の効果が同時に働く場合へと解析を発展させた。この結果、従来の系と違って、不安定な固定点が位相空間上で非対称的な位置に出現することが明らかになった。これはseparatrix通過時の系の状態の分岐が確率的に決定されることを意味する。このような分岐が生じることは古在機構ではこれまで知られておらず、今後も継続して研究を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初考えていたよりも興味深い現象を発見するなど順調に進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
星団ポテンシャル、相対論的近点移動効果双方を取り込んだ研究を継続して行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
重力波の初検出イベントGW150914の発生により研究成果の国際会議における発表に遅れが生じたため。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度中に開催される会議において成果を公表する。
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