研究課題
今年度も前年に引き続いて階層的三体系に対する古在効果の進化を調べた。現実的な対象としては銀河中心ブラックホール周りの星団を想定し、第2の巨大ブラックホールが断熱的に落下してくる状況を考えた。対応するハミルトニアンは、(1)第2ブラックホールの潮汐ポテンシャル、(2)中心ブラックホールよる相対論的補正、(3)星団のポテンシャルの三項から構成されている。まず初めに第2ブラックホールの落下に伴い、星団の個々の星の軌道要素がどのように進化するか数値的に調べた。そして、星の離心率等の進化が特異な遷移を起こすこと、この遷移が軌道要素の初期条件にきわめて敏感であることを発見した。次に断熱不変量を援用して、位相空間および個々の軌道要素の時間発展を追い、発見した特異な現象がseparatrix通過時の確率分岐によるものであることを突き止めた。また、重力波初検出イベントGW150914の報告を受けて、存在が確定した連星ブラックホールがスペース重力波観測計画に及ぼす影響を検討した。まず、LISAは低周波で重力波観測を行うので、残留離心率測定によりブラックホール連星の起源に迫れるかもしれない点を指摘した。さらに、LISA方式は地上干渉計とデザインが異なっており、重力波振幅の較正誤差が小さい点に注目した。そしてGW150914のようなブラックホール連星を使って、近傍のハッブルパラメータを宇宙論的に意義のある精度で計測できる見通しであることを指摘した。
3: やや遅れている
GW150914は予想されていたよりも大きな質量のブラックホールであった。そのために従来の天文モデルを見直す必要が生じた。この結果として本研究計画にも若干の遅れが生じた。
GW150914, GW151226の観測によって新たにもたらされた天文学的知見を積極的に活用して研究計画を進めていく。
重力波初検出によってもたらされた天文学的情報を研究に取り込んだため、計画の進行が遅れた。これに伴い、成果発表を当初の予定よりも遅らせたため。
今年度開かれる国際会議で成果を積極的に報告していく。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)
Physical Review D
巻: 93 ページ: 124024
10.1103/PhysRevD.93.124024
Progress of Theoretical and Experimental Physics
巻: 9 ページ: 093E01
10.1093/ptep/ptw127
Monthly Notices of the Royal Astronomical Society
巻: 462 ページ: 2177-2183
10.1093/mnras/stw1767