研究課題
本年度はまず銀河中心の活動銀河核 (AGN) の活動について、理論と観測の両面から研究を行った。まず、近傍にあるために詳細な観測がなされている、銀河系の AGN (Sagittarius A*) の活動で生成した宇宙線が、星間空間に流れ出し、周囲のガスと相互作用することでガンマ線を放出するというモデルを提唱した。このモデルは最近のガンマ線望遠鏡 (HESS) の観測をよく説明することができる。また Sagittarius A* の活動と銀河系中心方向の巨大なガンマ線構造(フェルミバブル)との関連を、近い将来の観測機器で明らかにできる手法について検討した。銀河系に比較的近い楕円銀河 NGC 1275 の AGN である 3C 84 は VLBI 電波観測により、過去50年ほどの間にブラックホール周辺から噴出したと思われるジェットが観測されている。測定されているこのジェットの固有運動と、シンプルで解釈が容易な理論モデルを組み合わせることで、ブラックホールのごく近傍 (<10 pc) の状態を明らかにした。この研究により、ブラックホール周辺のガスは、極端に非一様であり、ガスの多くは冷たい円盤としてブラックホール降着していることがわかった。さらにブラックホールへのガスの流れは、標準的な Bondi 降着モデルには従っていないことも明らかになった。銀河団成長は銀河団環境に影響を与える。その一例が銀河団にガスが降着するときに発生する衝撃波での宇宙線加速である。この加速は従来は1次フェルミ加速であると思われていたが、我々は2次フェルミ加速である可能性を調べ、実際に2次フェルミ加速ならば電波観測のデータをよく説明できることを指摘した。また様々な銀河団についてX線観測を行い、銀河団環境の多様性について調べた。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度はブラックホールへのガス降着を明らかにする目標を立てていたが、ブラックホール周辺の状況についての手がかりを 3C 84 について得ることができた。またブラックホール周辺で生成された宇宙線が周囲の星間空間に流れ出し、周囲の環境に影響を及ぼす過程について、銀河系中心の AGN である Sagittarius A* について観測を再現するようなモデルを構築することができた。さらに、銀河団での宇宙線加速メカニズムの定説に見直しを迫る成果を上げることができた。
今後予定していた研究のうち、X線衛星ひとみ (Astro-H) を用いたものは、ひとみの故障により遂行できなくなる可能性がある。 そのため観測については、X線観測の代わりに、電波観測、可視光観測を重視する。
新しい CPU を使用したワークステーションの購入を予定していたが、発売が予定より遅れたため。
ワークステーションの購入費用に充てる。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 6件、 査読あり 8件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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