研究実績の概要 |
スピンがある場合の効率的な連星合体重力波探査のため,スピン歳差運動がある場合の重力波波形計算について, 新しい重力波波形計算方法(Chatziioannou et al. Phys. Rev. D 95, 104004)について調べた.またスピンありの現象論的な波形であるIMRPhenomDと呼ばれる波形コードの実装を行った.そのコードは2019年以降のKAGRAデータ解析で用いられる.また本年度は2016年3月4月に行われたKAGRAの試験運転時の実際のデータを用いた解析のとりまとめを行った.KAGRAデータ解析のために独自に開発された連星合体探索パイプラインを用いて,KAGRAの実際のデータを用いて中性子星連星合体探索を行い,最終的なイベントレートの上限値の導出を行った.上限値導出の際にはノイズだけで生じるバックグランド分布の推定が重要な問題であるが,それに対して,1台検出器のトリガー分布から一般極地分布を用いたフィッティングによるバックグランド推定を行った.この手法は他では用いられていない新しい方法である.また,得られた中性子星連星合体イベントトリガーの時刻と,KAGRA検出器の補助チャンネルデータとの相関解析を行った.特に従来余り非線形相関に感度があるMaximum Information Coefficientを評価し,補助チャンネル信号と重力波信号が含まれる可能性がある主干渉計信号との相関を調べた.その結果,入射光学系モードクリーナーの制御信号と主干渉計信号との間に非線形相関があることが分かった.この結果はKAGRA検出器の感度や安定性向上に役立てられる.
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