研究課題
三体核力を含む複素G行列相互作用CEG07bおよびMPaを用いた軽い原子核入射の弾性散乱および非弾性散乱の反応解析をするプログラム整備および、それを用いた反応解析を一部開始した。具体的には、1. 高密度領域における媒質効果および三体力効果が弾性散乱観測量で探索可能となる最大密度を人為的変化する手法で、弾性散乱により探索可能な高密度領域の最大密度を定量的に決定した。2. E/A=100 MeVでの12C+12C弾性・非弾性散乱実験データを、(1)2体核力のみCEG07a,(2)三体力を含むCEG07b、(3)Pomeron交換による3体,4体力入りのMPa,の3種の相互作用を用いて、チャネル結合計算で実験データを分析し、3体力模型の違いを分析する上で非弾性散乱が有効であることを示した。3. 3体力・4体力の効果を含むMPa-複素G行列相互作用を用いて、入射エネルギーがE/A=100MeV~400MeVでの6Li弾性散乱における6Li→α+d 分解過程の影響をCDCC法を用いて分析した。その結果、微視的相互作用模型が与える結合ポテンシャルの強いエネルギー依存性が、分解効果に起因する「動的分極ポテンシャル」の実部・虚部の強いエネルギー依存性と密接に関連し、2次の摂動論での定性的理解が可能であることを示した。
2: おおむね順調に進展している
研究概要で述べたように、ほぼ計画通りに進捗している。また、研究成果は、原著論文1編、国際学会講演3件(連携研究者によるものを含む)、国内学会2件、国内シンポジウム講演1回、研究会講演1回等で報告を行った。また、現在、シンポジウム講演に関わる招待論文を含め、3編の論文を執筆中である。
当初の研究計画に沿い、今後は、これまで安定核である12Cや16Oの弾性散乱および非弾性散乱に限られていた対象を広げ、中性子過剰核を含むより広範な原子核を入射粒子とする弾性散乱および非弾性散乱について、最新の複素G行列相互作用に基づく微視的相互作用模型を適用し、不定性を可能な限り排除した微視的核反応計算を行うとともに、三体力・四体力を含む媒質効果が、原子核の弾性・非弾性散乱へ及ぼす効果の詳細な分析を行う。更に、高密度領域の媒質効果の顕著な影響を利用して、G行列理論を介して、高密度核物質および中性子核物質の、特に飽和密度の2倍までの領域での飽和曲線の確定を目指すとともに、パイペロン混合効果も考慮した中性子星ハドロン物質の状態方程式を推定し、中性子星最大質量問題に対するこれまで得られている結果の精密化をはかっていく予定である。
当初、購入を予定していたワークステーションおよびハードディスクの性能および価格が変更となり、約1万円の残額が生じた。
残額は次年度交付予定額40万円に積算し、次年度の研究遂行に必要な旅費および消耗品費等として執行する計画である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
ACTA PHYSICA POLONICA B
巻: 47 ページ: 853-858
Progress of Theoretical and Experimental Physics Special Section
巻: 未定 ページ: 未定
Physics Letters B
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http://dx.doi.org/10.1016/j.physletb.2015.10.008