研究課題
(1) Pomeron交換による3体力、4体力の効果を含む MPa複素G行列相互作用を用いたfolding potentialの局所密度依存性および入射エネルギー・標的核依存性を、E/A=70~400 MeVでの12C+12C弾性散乱および、E/A=94 MeVでの16Oと種々の標的原子核(具体的には12C,28Si,40Ca,90Zr,208Pb)との弾性散乱について、系統的かつ精密に分析した。その結果、これは入射エネルギーや反応系によらず、飽和密度の2倍程度までの高密度領域での3体力の効果が、弾性散乱断面積を通して観測可能なレベルの効果として顕著に現れることを確認した。(2) E/A=100 MeV での12C+12C系の弾性・非弾性散乱の実験データを、異なる種類の複素G行列相互作用に基づくfolding model相互作用を用いた微視的チャネル結合法によって理論的に分析した。その結果、用いた複素G行列相互作用の違いが、特に3体力の効果が、弾性散乱だけでなく、複数の状態への非弾性散乱断面積の相対比率や角度分布の違いとして現れることが分かった。これは非弾性散乱の実験的観測が3体力を含む相互作用の詳細を研究する手段として有効であることを示唆する結果である。(3)微視的チャネル結合法による非弾性散乱の分析では、分析する原子核の遷移密度の信頼性が重要であるため、(2)の結果を受けて、従来用いていた12Cの励起状態への遷移密度の信頼性を高める為、3α直行条件模型を用いた構造計算により、信頼性の高い遷移密度の構築を行った。(4)本課題に深く関連する研究会を、大阪市立大学において1月に実施した。
2: おおむね順調に進展している
研究概要で述べた通り、ほぼ計画通り進捗している。また、研究の途中経過から、新たな課題(遷移密度の精密化)などの新たな発展課題も見いだされ、その方向への研究も一部開始した。今年度中に、原著論文3編(掲載決定1件を含む)を公表した。
当初の計画に沿い、多体力を含む複素G行列相互作用を用いた原子核間の微視的相互作用模型を確立するとともに、不安定核を含む任意の核反応系の非弾性散乱や分解反応などの直接過程核反応に適用できる、不定性の少ない微視的核反応模型の確立に向けて、最後の詳細な詰めと、汎用の核反応プログラムコードの開発を継続していく予定である。また、並行して、反応模型の精密化に必要な遷移密度などの核構造についての課題も明確になりつつあり、関連する研究者との情報交換や共同研究の可能性を探っていく予定である。
当初計画していた日本物理学科(宮崎大学)への出張が大学の公務と重なり、出席が出来なかったため、標記の残額が生じた。
残額は、次年度の交付予定額に積算し、次年度の研究遂行に必要な旅費及び消耗品等棟として執行する計画である。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 3件)
Physical Review C
巻: 95 ページ: 044616(14pages)
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