研究実績の概要 |
佐藤弘一特任講師、緒方一介准教授(大阪大学核物理研究センターとのクロスアポイントメント)、古本猛憲氏(横浜国立大学准教授)、菊地右馬氏(徳山高専准教授)と共同で昨年度より開始した、Constrained Hartree-Fock-Bogoliubov plus Local quasiparticle RPA(CHFB+LQRPA)法を用いた中重核の微視的遷移密度を導出し、これを用いてG行列相互作用を用いた原子核反応計算を行う一連の定式化を確立した。 この手法の有効性を検証するため、具体的に154Sm 原子核について基底状態および種々の四重極変形を示す低励起状態間の遷移密度を計算し、Ep=35MeV, 65MeVでの陽子と154Smとの弾性・非弾性散乱の反応計算を行い、実験データとの比較を行い、①弾性散乱および第1励起2+状態への非弾性散乱実験を非常によく再現、②β変形バンド、γ変形バンドに属する励起状態への非弾性散乱が、原子核の変形度に極めて敏感であり、微分断面積の角度分布に変形度の違いが明確に反映されることが判明した。この成果をまとめた論文を執筆・投稿し、現在査読中である。(https://arxiv.org/abs/1904.07398) この成功は、これまで実験による直接検証が困難であった微視的核構造理論の信頼性を、核反応実験により実証的に検証する方法論を開拓したもので、今回の154Smのような典型的な変形安定核についてのこの手法の実用性を起点に、今後、この新たな手法を、中性子過剰核を含む種々の変形度をもつ中重核の核反応に適用して実証的検証を行う事により、微視的核構造論と微視的反応論をつなぐ新たな手法の確立と核構造研究の新たな方法論が確立された。 本研究課題に密接に関連する研究集会を2019年3月に2度(2019.3.6 及び 3.28)大阪市立大学において実施した。
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