研究課題
超新星残骸の外縁部にある強い衝撃波ではkneeエネルギー(=10の15.5乗eV)以下の銀河宇宙線が加速されていると考えられている。衝撃波の伝播する媒質はこれまでは簡単のため完全電離した一様なプラズマであると仮定されることが多かったが、現実の星間空間は分子雲や爆発前の親星の星風などの密度揺らぎが存在する。本研究では、上流媒質の非一様性が宇宙線加速過程におよぼす影響を明らかにすることを目指した。最終年度となる平成29年度では、主に以下に挙げる成果を得た。1、分子雲と相互作用する宇宙線加速超新星残骸の代表格であるRX J1713.7-3946における粒子加速理論と多波長観測の現状をまとめ、さらにCherenkov Telescope Array (CTA)で将来観測した際に何がどこまでわかるのかを検討した。その結果、CTAで50時間の観測を行えば、ガンマ線放射が電子起源か陽子起源かを同定でき、さらに100TeV以上まで加速された陽子が存在すればその兆候をとらえることが可能であることを示した。2、分子雲と衝突している2つの超新星残骸3C400.2とN132DのX線のデータ解析を行った。前者については新たに再結合プラズマを発見し、その起源が小さな分子雲との衝突であると推測している。後者についてはプラズマやガンマ線の観測的性質が若い超新星残骸と古いものの中間状態にあることを示し、外部物質との衝突によって状態遷移している最中にある超新星残骸であると結論付けた。3、衝撃波上流の現実的な星間媒質は電離していない水素原子が存在するため、超新星残骸の外縁部からはバルマー輝線が観測され、さらにそれが偏光している。衝撃波が効率良く宇宙線加速を行なっている場合は衝撃波下流の温度が下がることに起因し偏光度が上昇することを理論的に示し、将来観測への提言を行なった。
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