研究課題/領域番号 |
15K05090
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
鈴木 俊夫 日本大学, 文理学部, 教授 (70139070)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 電子捕獲反応率 / ベータ崩壊率 / 核URCA過程 / 元素合成 / 中性子ハロー / ソフトダイポールモード |
研究実績の概要 |
(1)sd殻核においてUSDB相互作用を用いて、高密度、高温条件のもとでの電子捕獲率、陽電子捕獲率、ベータ崩壊率、ニュートリノによるエネルギー損失率等を求めた。これらの計算データを核URCA過程に応用し、太陽質量の8-10倍の質量をもつ星のO-Ne-Mgコアのクーリングと星の終末の運命-電子捕獲超新星爆発を起こすか鉄コア崩壊型超新星爆発を起こすか-の決定にこれらの精密な核データが果たす重要な役割を明らかにした。 (2)fp-殻核の新しいハミルトニアンGXPF1Jを用いて、高密度・高温の天体条件下での電子捕獲率、ベータ崩壊率の精密な評価を行い、従来のKB3G, KBFハミルト二アンによる評価と有意な差があることを示した。これらの核データをIa型超新星爆発による元素合成に応用し、Fe領域の中性子過剰核が太陽系近傍の合成率に比べ過剰生産されるというこれまでの比較的簡単な理論計算の評価が著しく改良されることを示した。 (3)11Liのソフトダイポールモードが低エネルギー励起状態で実現されることを殻模型計算をもとに明らかにした。アイソスカラー型のダイポールモードが殻模型計算による励起エネルギー近くに存在する実験的証拠が得られた。 (4)低エネルギー散乱から決まる中性子-中性子間核力を用いて、中性子過剰核のエグゾティックな状態、すなわち、2中性子ハローの生成を24O、22C核において理論的に導き出すことに成功した。 (5)中性子数N=126のアイソトーンのベータ崩壊の寿命を殻模型計算によって陽子数Z=78核まで評価し、r-過程による元素合成に適用した。この新しい寿命をもとにした天体計算を行うと、コア崩壊型超新星爆発でTh、U核の合成が促進されることを示した。中性子合体の天体過程におけるr-過程では、Th、Uの合成へのN=126核の寿命の違いによる影響は小さかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)sd殻核での核URCA過程の研究は、太陽質量の8-10倍の質量をもつ星の進化の研究への応用で大きな成果を挙げた。天体条件下での電子捕獲率、ベータ崩壊率の核データのシステマチックなアップデート、テーブル化が完成した。 (2)fp殻核の電子捕獲率のIa型超新星爆発によるFe領域の元素合成への応用研究が順調に進んでいる。 (3)r-過程元素合成にN=126アイソトーンの新しいベータ崩壊率が及ぼす影響の研究も順調に進んでいる。 (4)中性子過剰核のハローの構造、特に2中性子ハローの生成について中性子-中性子相互作用をもとにした3体モデルにより重要な成果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)fp殻核での電子捕獲率、ベータ崩壊率の核データのシステマチックな集積、Ia型超新星爆発によるFe領域元素合成への応用研究の継続を行う。また、弱遷移率をコア崩壊型(II型)超新星爆発での元素合成の研究にも適用する。 (2)N=126アイソトーンの新しいベータ半減期によるr-過程元素合成の研究を継続する。また、N=82アイソトーンへ研究領域を拡張し、r-過程元素合成の機構の解明を目指す。 (3)78Ni等の中性子過剰核でのスピン依存型遷移率の評価を、fp殻に加えてg9/2、d5/2殻も含む拡張した配位で行い、天体条件下での電子捕獲率を求める。この核領域では、ガモフ・テラー遷移だけでなく、スピン双極子遷移が重要な寄与をする。 (4)ニュートリノの検出に有効な核標的、13C、16O、18O、40Ar、によるニュートリノ-原子核反応断面積を、実験との比較、検討が可能なように、ガンマ線や粒子放出チャネルの各分岐ごとに評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入した機械備品(物品費)の値段が予定の予算額を下回ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の国際会議の参加登録費の一部に使用する予定である。
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