研究実績の概要 |
【最終年度の成果】1.枠組みが完成した「テンソル最適化反対称化分子動力学」(TOAMD)を軽い核に適用し、成果を論文として公表した。TOAMDは厳密計算による軽い核のエネルギーを再現することが判明し、新しい第一原理計算法と位置付けられる。TOAMDではAMD型の波動関数に2体の相関関数を冪級数で掛け、各冪の相関関数を独立な変分関数として扱う。この扱いが、相関関数を全ペア間で共通にするジャストロー法よりも優れている。更に不安定核である6He、及び6LiにTOAMDを適用し、テンソル力の寄与は陽子-中性子のペア数が多い6Liで大きくなることを確認した。また相関関数と相互作用の積から生じる多体相関の寄与を評価し、4体相関までの重要性を示した。 2.TOAMDの基底関数であるAMD部分を複数重ね合わせる生成座標法(GCM)を行った。特にテンソル力と短距離斥力が原子核内の核子の運動に与える高運動量成分を直接AMD基底に取り入れることに着眼し、板垣氏らによる手法を採用し、クラスター展開法により拡張してTOAMDと結合した。その結果、TOAMDの相関関数の冪数を上げることなく厳密計算の解を再現することに成功した。 3.複素スケーリング法(complex scaling method,CSM)による不安定核・ハドロン系の共鳴を調べた。特に9Beの8Be+n的な構造に注目し仮想状態の可能性を調べた。またK中間子を含む3体バリオン系の共鳴状態を結合チャネル法で求め予言し、最新の実験値と比較した。
【研究期間全体の成果】TOAMDの枠組みが完成し、核力を直接扱う新しいエネルギー変分法が確立された。TOAMDは相関関数の冪数を増やすことで逐次的に変分空間を拡げられることも判明した。同時に複数のAMD基底関数を重ね合わせるTOAMD+GCMも有効であることが分かった。
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