研究課題/領域番号 |
15K05094
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
宇都野 穣 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究主幹 (10343930)
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研究分担者 |
清水 則孝 東京大学, 大学院理学系研究科, 特任准教授 (30419254)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 殻模型 / 不安定核 / 殻進化 |
研究実績の概要 |
陽子数が13から18まで、中性子数が22から34までの78核種の中性子過剰核からのベータ崩壊の半減期と遅発中性子放出確率を大規模殻模型計算によって系統的に調べた。従来は、このような系統的なベータ崩壊データの微視的計算は、主に乱雑位相近似を用いて行われてきた。本研究は核子間相関をより完全に取り入れた計算によってどれだけ記述精度が改善されるかを調べたものであり、今後の中重核への適用や天体核反応への応用に対しても重要な意味を持つ計算である。実験値に対する計算値の誤差の解析を行った結果、従来の計算に比べ、これらの物理量を高い精度で与えることがわかった。また、ベータ崩壊の主な要素であるガモフテラー遷移強度分布に、核子数の強い偶奇性が出現するという新しい知見を与えた。この成果を論文にまとめ、Physical Review C誌に投稿し、アクセプトされた。 中重核の核構造研究として、陽子数・中性子数が50から82までの軌道をバレンス殻に採った大規模殻模型計算を開始した。アンチモン同位体で知られている低い準位構造の強い中性子依存性がテンソル力による殻進化によるものであることを明らかにした。これによって、h11/2軌道の位置が中性子数に強く依存することを確かなものとし、h11/2軌道が強く関与する集団運動を理論的に研究する基礎を築いた。こうした集団運動の例として、セシウム128のカイラルバンドを計算した。これは非常に大規模な殻模型計算を要するものであり、本研究によって初めて実現された。実験で知られているカイラルバンドの特徴とされている、M1およびE2遷移の強度をよく再現し、カイラルバンドを微視的な観点から記述することに成功した。この質量領域では、バリウム138、ランタン135の核構造について国外の実験研究とも共同研究を進め、論文執筆を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
陽子数・中性子数が50から82までの軌道をバレンス殻に採った殻模型計算を開始し、テンソル力による殻進化を確かめるとともに、この質量領域一帯の集団運動を統一的に理解できる目途がついた。
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今後の研究の推進方策 |
質量数130領域の集団運動を大規模殻模型計算によって統一的に記述できる見込みが立ったため、より系統的な計算を進めていく。特に、カイラルバンドやウォブリンクなど、近年興味を持たれている現象の微視的理解を目指す。実験研究者からの計算依頼も多くあるので、それらの共同研究の機会を最大限に活用したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の支出計画と実支出額に差分が発生したため、次年度使用額が生じることとなった。平成30年度に予定している学会発表に係る費用として使用する。
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